吸血鬼ノスフェラトゥ
【乙女が吸血鬼を惑わす】
(1922年・独・64分・モノクロ・サイレント)
監督:フリードリヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ
原作:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』
新作の『ノスフェラトゥ(ロバート・エガース監督・2024年)』を観るにあたって、いくつか確認したいことがあったので10年ぶりの再見となった。
本作が作られることになった経緯についてはあまりにも有名である上、過去の拙レビューでも触れているので今回は割愛することにする。
今回、確認したかった事というのは、吸血鬼ノスフェラトゥを死に至らしめる方法と、それを実行した女性についてである。現在普及している一般的な吸血鬼は、太陽の光に当たると死亡する(消滅する)のであるが、本作ではどのように描かれていたのか詳細を忘れてしまっていた。
オルロック伯爵(原作のドラキュラ伯爵にあたる人物。演-マックス・シュレック)つまり吸血鬼を殺すには、夫のトーマス(グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム)が持ち帰った本によると、
〈 純粋な乙女が美しさで吸血鬼を惑わせ、雄鶏が鳴く(日の出)を忘れさせることが有効である 〉と書かれていた。
トーマスの妻エレン(グレタ・シュレーダー)は夜、寝室の窓を開けてオルロック伯爵を誘惑し、オルロックは彼女の血を吸うことに夢中になって夜明けが近い事も忘れてしまう。やがて雄鶏が鳴くのであるが、太陽の光はエレンの部屋にも射し込み吸血鬼は消滅してしまう。
本作にはブルワー教授(ヨハン・ゴットゥト)という大学教授が登場している。原作におけるヴァン・ヘルシング教授なのだが、本作ではまるで役立たず。オルロック伯爵が吸血鬼であることに気づきはするが、それにはエレンの犠牲に頼るしかないと彼女の申し出を黙認するのだ。
私は、エレン自らが犠牲となることを望んだという部分をすっかり忘れていた。