カッツ
2025/11/15 08:02
わが心のバルチモア
1990年公開アメリカ映画、20世紀初頭のメリーランド州ボルチモアに移住してきたロシア系ユダヤ人一家の、三世代にわたる栄光と挫折を描いた人間ドラマである。
1914年、アメリカン・ドリームを胸に東欧から渡ってきたサム・クリチンスキーは、壁紙職人としてボルチモアに定住し、息子ジュールスや孫たちに囲まれて穏やかな日々を送っていた。移民としての苦労を乗り越え、家族とともに築いたささやかな幸福が、画面から静かに伝わってくる。
しかし、ある日ジュールスが経営するデパートが全焼してしまい、家族の運命は大きく揺らぎ始める。成功と挫折、希望と喪失が交錯する中で、家族の絆と誇りが試されていく。物語は、移民としての苦労だけでなく、世代間の価値観の違いや、アメリカ社会の現実も丁寧に描いている。
この作品は、移民の物語でありながら、家族の物語でもある。サムの誠実さ、ジュールスの夢、孫たちの未来――それぞれの世代が抱える思いが、静かに、しかし力強く描かれている。観終えた後には、心が温かくなり、人と人とのつながりの大切さを改めて感じさせてくれる。
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