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オズ・ワールドⅡ 先生と呼ばれた男・その舞台

                


                                                                            パルコプロデュース

            先 生 の 背 中 

                                                                     ~ある映画監督の幻想的回想録~

                    そのつづき


「先生の背中」のキャスト、あくまでフィクションとしているので、登場人物の名前は本名とモデルがわかるよう変えられています。

 

小津監督…小田昌二郎:中井貴一

野田高梧…盟友の脚本家、野崎公造:升毅

原節子…女優 谷葉子:柚希礼音

食堂「月ヶ瀬」の娘・杉戸益子(中井貴一のお母さん)…幸子:芳根京子

佐田啓二…助監督の佐藤誠司に変更:坂本慶介 

山中貞雄:川中貞介:坂本慶介 (兼任)

厚田雄春:有田カメラマン:久保酩吉

他に幻想キャラ、小田監督を囲む女性たちとして

元芸者・花江:キムラ緑子、戦争未亡人・和美:土居志央梨、銀座のホステスの千代:藤谷理子

©PARCO パルコプロデュース2025

小田監督の新作「秋刀魚の歌」の撮影所が舞台。なかなか進まない撮影、どうも小田監督の調子がおかしいとスタッフ、キャストたちが騒いでいます。食堂の看板娘、幸子が助監督の誠司が結婚することをみんなの前で発表します。小田監督に言うと大変なことになりやしないかと周囲が危惧します。幸子は小田監督の大のお気に入りです。そんな周囲の心配はよそにあっさりふたりの結婚を祝福し仲人を名乗りでます。小田監督と幸子の出会いが挿入されます。小田は独身、幸子は幼少のころに父を亡くしています。娘をもったことのない男と父をしらない娘とのひそかな関係が描かれます。

 

15年にわたって起用してきた谷葉子。小田の理解者であり盟友ですが、ふたりのあいだに男女の関係がらうのでは?と週刊誌が賑わかせます。撮影の混乱にも小田を擁護します。小田はこれまで葉子に「なかなか結婚に行かない娘」から、「戦争未亡人」、「再婚しない女」、「娘を嫁に出す母」などの役を託してきて、今回はバーの給仕です。

映画「秋刀魚の味」でこの役は原節子ではなく、岸田今日子が演じました。主人公の笠智衆が亡き妻の面影を感じて、そのバーに通います。そのシーンの再現?

小田はこの撮影に身が入りません。小田の苦悩の始まりです。

脚本家、野崎はこの小田の信条を代弁するかのように、小田に問います。小田には病魔が進行しています。「秋刀魚の歌」が最後の作品と覚悟した小田の苦悩が展開していきます。小田にとって人生は映画であり、映画こそが人生で自分の経験が作品となっていくのでした。ふたりで脚本づくりをした蓼科で飲み交わした「ダイヤ菊」の一升瓶がいくつも並んでいます。新橋にこの屋号のお店があります。

タイトル「秋刀魚の歌」について、野崎はある指摘をします。それは亡き川中のことを。

映画には作者の個人的心情を挿入する好例があります。小津監督は「東京物語」で山中貞雄への思いを原節子に託しています。「秋刀魚の味」にもこのことが触れられていたことを教えられました。そしてタイトル「秋刀魚の味」の重要な意味も。

 

ここから小田に関わる女性たちのエピソードで展開していきます。そのダイアログは小津作品の調子で綴られていきます。ここが絶妙です。

元芸者・花江のうちに葉子、花子を連れていき小田との関係性をお互いに披露します。お忍びで戦争未亡人・和美のうちにいき、銀座のホステスの千代が乱入し、さらに花江も葉子、幸子もやってきて小田の愛した女性たちに囲まれ、困惑します。

小津作品の想像上の作品秘話です。原節子とのゴシップ、私生活において愛人らしき人がいたともあり、それが花江なのか、和美なのか人間、小津安二郎をみせてくれます。

・「好き」とは言えない

・人生の楽しみは食事にある

・いいたい事は言えない

・人生はさみしい、寒いからストーブ?が必要

特に葉子を演じた柚希礼音は原節子のイメージをうまく演じています。歴代の女優たち語った原節子像は気風がよくて、たばこ、酒もやるさばけた女性だったと聞きます。そのイメージを基調にした演技は光っていました。

©PARCO パルコプロデュース2025

女性たちからわいわい責められ、背を向けてしまう小田。自分の命の限りに怯えています。小田が心許せるのは戦死した川中です。軍服を着て現れます。同じ映画監督として称えあった仲。川中は生きていることの贅沢さ、うらやましさを小田にぶつけます。そして映画をつくれ、余計なものを省け!と小田に訴えます。作品を撮れと!

山中貞雄監督の墓碑が、わての近所のお寺にあります。小津安二郎監督の筆による「山中貞雄之碑」を拓本した軸が掛けられているそうです。まだ行ってません…

小田は葉子のバーのシーンをカットすることを決断します。そして葉子をキャストから外してしまいます。現場が大混乱、助監督の誠司は小田に怒りをぶつけます。小田の決意を野崎が代弁します。それは川中との約束なのです。

ラスト、ふと撮影所訪れた小田、そこに誠司、幸子夫婦がやってきて、生まれてきた男の子に名前をつけほしいと頼みます。小田は「誠一」と名付けました。そして人生は「無」であると。

©PARCO パルコプロデュース2025

再演があれば、ぜひみたいものです。

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