J.T.Hammer
2025/11/15 22:55
冥府の女王に惑わされた男が見る地獄
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【2025-No.53】
Hecate
ヘカテ
スイス・フランス 105分 1982年

異国の地モロッコで謎めく人妻との情事に溺れゆく外交官の姿を描いた80年代を代表する一作。個人的にローレン・ハットンは全く好みのタイプではないので、なぜ主人公があれほどまで彼女に執心するのか理解し難いところはあるが、得てして姦通とは他人の理解が及ばぬものにして、仮に自分が同じ立場ならやはり冥府の女王たるクロチルドが張った蜘蛛の巣に絡め取られていたかもしれない。最初は理知的だったロシェルがクロチルドのミステリアスな態度に疑心暗鬼へと陥り、嫉妬に駆られる余り粗暴な男へと変貌していく様は実にリアル。夜の帳に包まれた闇に射し込む光のなかで浮かび上がる男と女を捉えたショットは大変美しく、それはまさしくカラー・ノワールのマスターピースと云えよう。劇中で二度流れる楽曲がシューマン作曲「子供の情景」なのはこの内容からするとなかなか意味深だ。アメリカ人のハットンが全編でフランス語を流暢に操っていたのは天晴
★★★★★★★☆☆☆
監督 ダニエル・シュミット
脚本 ダニエル・シュミット他
撮影 レナータ・ベルタ
編集 ニコール・ルプシャンスキー
音楽 カルロス・ダレッシオ
出演 ベルナール・ジロドー
ローレン・ハットン
ジャン・ブイーズ
(※現在ディスカスでは本作の取り扱い無し)

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