惑星Xから来た男
惑星Xから来た男
1951年 アメリカ 劇場未公開
スタッフ 監督:エドガー・G・ウルマー 製作:オーブリー・ウィスバーグ、ジャック・ポレックス
フェン 脚本:オーブリー・ウィスバーグ、ジャック・ポレックスフェン 撮影:ジャッ
ク・L・ラッセル 特撮:ジョン・グラス 音楽:チャールズ・コフ
キャスト ロバート・クラーク、マーガレット・フィールド、ウィリアム・シャラート、ロイ・エンゲ
ル、レイモンド・ボンド、ギルバート・フォルマン、デヴィッド・オーモント、トム・デ
イリー、ジューン・ジェフェリー ほか
舞台は霧深いスコットランドのオークニー諸島。高名な天文学者エリオット教授(レイモンド・ボンド)は、数百年前に建てられたという古い塔に研究所を構えていた。ある時、エリオット教授は謎の惑星Xが地球へ急接近していることに気付き、かつての弟子だった野心家のミアース博士(ウィリアム・シャラート)を呼び寄せ、惑星Xがあとどれほどで地球へ最接近するのか、それによってどのような影響が起きるのかを急ピッチで調べていた。そこへ、アメリカ人の新聞記者ローレンス(ロバート・クラーク)がカリフォルニアからやって来る。以前からエリオット教授と親しかった彼は、特ダネを書かせてもらう約束をしていたのだ。

ユニバーサル・ホラー『黒猫』('34)やフィルムノワール『恐怖のまわり道』('45)などの優れた低予算映画を数多く手がけ、「B級映画の王様」との異名を取る名匠エドガー・G・ウルマーが監督したSFホラー映画です。'50年代SF映画ブームが本格的に幕を開けたとされる年だ。当時は大手スタジオの話題作の影に隠れる形で埋もれてしまったが、その後のSF映画を先駆けたような設定には見るべきものがあり、今ではカルト映画として一部で高く評価されている作品です。一般的に侵略型SF映画の元祖は『地球の静止する日』とも『遊星よりの物体X』とも言われているが、しかし本作はそれらを半年近くも先駆けている。また、地球人がエイリアンによってコントロールされる筋書きも、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』('56)よりもこちらの方が一足も二足も早い。体が小さくて頭の大きなエイリアンというSF映画の典型的なクリーチャー造形も、『惑星アドベンチャー』('53)や『宇宙水爆戦』('55)などを先取りしている。こうした先駆性は注目に値するだろう。ウルマー監督自身が現場で大幅に脚本を書き直したとも言われているが、単なるB級エンターテインメントに終始しない骨太なストーリーは、さすがスコセッシやヴェンダースやゴダールにも影響を与えた異才エドガー・G・ウルマーだけのことはある。さらに、低予算B級映画ゆえの物理的&創造的な制約を、知恵を凝らした創意工夫によって武器へ変えてしまった、低予算を逆手に取った独創的なビジュアルも大きな見どころだ。