映画『フロントライン』予想を裏切る男たちの絆に涙!これは令和版『踊る大捜査線』だ!
「どうせ、お役所仕事の役人と、現場の熱い人たちが対立する話でしょ?」
正直、そう高をくくっていました。宣伝動画から勝手にそんなストーリーを想像して、少し冷めた気持ちでの鑑賞スタート。
しかし、鑑賞後、私の心に残ったのはそんな単純な対立構造ではありませんでした。そこにあったのは、絶望的な状況の中で生まれる**「男と男の、固い友情と信頼」**。例えるなら、あの『踊る大捜査線』の青島刑事と室井管理官が交わした、言葉を超えた約束のような熱い何か。
もしあなたが『踊る大捜査線』が好きなら、この作品は間違いなく心に響くはずです。本作は、ただのパニック映画ではありませんでした。
物語は、正体不明のウイルスが広がり始めた日本。感染拡大を水際で食い止めるため、ウイルス感染者が乗っていると疑われる一隻のクルーズ船が、港で隔離される。外部から遮断された船の上で、乗員乗客の命と、日本の未来を守るために奔走する医師や政府関係者たち。しかし、彼らの信念とは裏腹に、世間やマスコミからの無理解な声が、彼らを精神的に追い詰めていく…。
・胸に突き刺さる、松坂桃李の一言
この物語には、心をえぐられるようなリアルさがあります。それは、実際に起きた出来事を元にしているからかもしれません。命がけで戦う現場の医師たちを、心ない言葉で傷つける人々。その描写は、見ていて本当に胸が苦しくなりました。
そんな中で、私が最も心を揺さぶられたのは、仕事ができる役人(松坂桃李さん)が悔やんで口にしたこの言葉です。
「自分が責任を取らなくていいように、相手に判断させた」
このセリフを聞いた瞬間、自分のことだ、と心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けました。 仕事で波風を立てたくないから。自分に責任が及ぶのが怖いから。誰かにうまく言わせて、自分は安全な場所から物事を進める…。そんな自分の「責任回避」の姿勢が、この一言によって暴かれた気がして、情けなさで顔が熱くなりました。
人の命という究極の選択を迫られた時、彼は「本人の意思を尊重した」という大義名分で、実は最も重い責任から逃げていたのです。この映画は、そんな人間の弱さ、醜さを容赦なく描き出します。
・絶望の中に見えた「ありがとう」という希望
しかし、この映画は私たちを絶望させて終わりではありません。
家に帰れず、情報も制限され、ただただ船室に閉じ込められる乗客たち。彼らこそ、一番の被害者のはずです。それなのに、彼らはサポートしてくれた医師やクルーたちへの感謝を、部屋のドアにメッセージとして書き残すのです。
「ありがとう」「感謝しています」
苦しい状況にありながら、感謝の気持ちを忘れない人々の姿。これこそ、この映画が本当に伝えたかったメッセージなのだと確信しました。
コロナという未曽有の事態は、私たちから多くのものを奪い、時に人を人でなくさせました。しかし、本作はそんな中でも失われない**「感謝の心」**という希望を力強く描いてくれます。
・自分の「醜さ」と「希望」に気づかされる物語
この映画は、私たち観客に鏡を突きつけます。
パニックの中で見える人間の醜さ、自分の利益しか考えない利己的な姿。それは、多かれ少なかれ、私たち自身の中にもあるものかもしれません。自分の恥ずかしさに気づかされ、胸が痛くなるかもしれません。
しかし、同時に、極限状態でも失われない優しさや、助けてもらったことへの感謝の気持ちも描かれています。
ぜひこの映画を見て、人間の良いところと悪いところ、その両方を感じ取ってください。そして、それを自分の生き方に映し出すことができたなら。きっと、私たちの社会は「助け合うことが当たり前」の、もっと優しい場所になれるはずです。
『踊る大捜査線』のような男たちの熱いドラマが好きな人、そして日々の仕事や人間関係に少し疲れている人にこそ、観てほしい一作です。