『潜水艦コマンダンテ』: イタリア海兵達の誇り高きシーマンシップをみた。

こんにちは！
そぜシネマです。

『映画×旅』をキーワードに国内・海外問わずテーマを決めて世界中の世界遺産と映画ロケ地を巡るのをライフワークにしており、『今日どこの国行こう？』が叶う【お茶の間旅映画】紹介します！

オンライン試写会に招待いただき、一足早く観てきました。

観た作品はコチラ！

©2023 INDIGO FILM-O’GROOVE-TRAMP LTD-VGROOVE-WISE PICTURES

あらすじ

第二次世界大戦が始まったころ、サルヴァトーレ・トーダロはイタリア国王海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニに艦長として潜航していた。1940年10月、大西洋航行中のこと、ライトを消した貿易船のシルエットが夜の暗闇の中迫ってきた。後ほどわかることだが、それはベルギー船カバロ号で、イギリス軍の武器と軍需品を積んでおり、突如潜水艦に向けて攻撃を仕掛けてきた。短くも激しい衝突が起こり、潜水艦コマンダンテが貿易船を大砲で沈めた。その時艦長は、放っておけばそのまま海で溺れ死んだであろう26名の生き残ったベルギー人たちを、国際海洋法に従い救助して近くの安全な港に降ろしに行くという歴史的決断をした。すべての生き残りを乗艦させることで、３日間敵から視認されてしまう海面上を航行しなくてはならなくなり、それは自らの命と船員たちの命を危険にさらすことであった。カバロ号の船長は、アゾレス諸島のサンタ・マリア島で下船した際、なぜ自らの命令で危険を冒してまで救助してくれたのか尋ねた。サルヴァトーレ・トーダロ艦長はこう答えた。その言葉はのちに伝説として語られることになる。

「私の中には2000年の歴史が血肉となって流れている」

所感・みどころ

『レッドオクトーバーを追え！』
『クリムゾンタイド』
『名探偵コナン黒鉄の魚影（サブマリン）』
『沈黙の艦隊』etc..

基本的には【存在することを公開してはならない船】であり、いわゆる【防衛秘のかたまり】である潜水艦。その超機密兵器を題材にした映画はまさに現実では知りたくても知れない男女の永遠のロマンであり、私の経験上【潜水艦映画はすべらない】というのが持論です。

そして、本作を今回観て更に自説を証明する結果になりました。

本作を一言で表すと

【熱く、じゅうこう（重厚・重工・銃口）感たっぷりな戦争ロマン作品】

でしょうか。

本作は第二次大戦下に、イタリア海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニが沈めた敵国船の乗組員を救助した。という実話を史実に忠実に描いています。

当時は「敵国の人道救助はしてはならない」が戦時中まかり通っていた中で相手国を助ける、しかも最低限の空間と酸素がない中で彼らを艦艇に収容し、はみ出た人も艦艇上部の部屋にかくまうことで潜水艦が海上に浮上し、潜れない中でリスクを負いながら（実際に攻撃された）航行した事が今になって評価されている事例です。

そして本作が他の潜水艦映画と異なるのが、戦闘シーンはがほとんどないこと。

武器・兵器などを駆使した激しいバトルシーンはほとんどなく、戦時下においても決して失われることのないイタリア海兵たちの誇り【シーマンシップ】を主軸に展開されているのが印象的です。

組織と規律を重視するドイツ海軍

個人と誇りを重視するイタリア海軍

同じ連合国でもこの対比が節々で感じられました。

トーダロ艦長が「我々は容赦なく敵を沈める。だが人間は助けよう」と口にして救助する様はイタリア海兵としての誇りを感じさせます。

またイタリアと言えば美食とオペラ。

随所にイタリアの歌を合唱して仲間を鼓舞し、任務遂行中でもやはりご飯は何よりの楽しみ。

ご馳走の際は『今夜はニョッキだ！』とお祭り騒ぎになり、たとえ食糧がつきた際も、料理担当がイタリアのご馳走料理名を言葉にしながらスープを分け与えていく様子が印象的でした。

余談ですが本作はほぼ男だらけ戦争映画ですが序盤にトーダロ艦長の妻が回想シーンで登場します。しかも結構なカットと頻度で。

しかもほぼハダカ。おそらく妻が妊娠しているのに船に乗り込む軍人としての葛藤を表現したかったのかと思いますが、最初は戸惑いました😂

こういった無理やり女性を入れ込む演出もイタリア映画らしいなあと笑。

尚、今回の主人公であるイタリア海軍潜水艦コマンダンテ・カッペリーニは1943年、「アキラ3号」とも呼ばれており、直後にイタリアが降伏するとドイツ軍に引き渡されて「UIT24」と改名。さらにドイツ降伏後には再び日本軍に接収され「伊号第五百三潜水艦」として特殊警備潜水艦となり、1945年の日本軍降伏後に連合国に接収され、紀伊水道で海没処分されています。

つまりカッペリーニは日本の海の底に眠っているんです。
こういった歴史は日本国内からは決して出てこず、こうして海外作品から知るというのも少し悲しい気がします。

いかがでしたでしょうか。

極太の戦争映画でありながら最後まで人道主義とイタリア人としての誇りを捨てなかったカッペリーニ艦隊の海兵隊の勇姿を是非大画面でご覧ください。

私にとっても数ある戦争映画の中でも魂に訴えかける異色の良作だと思います。
少しでも伝わり、観てもらえたら嬉しいです。