DISCASレビュー

カッツ
2025/11/12 07:56

バベル

2006年公開、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、出演はブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子ら国際色豊かな俳優陣。

物語は、モロッコ、メキシコ、アメリカ、そして日本という全く異なる場所で起きる出来事を並行して描いていく。モロッコでは、父親が裏取引で手に入れたライフルが、羊を狙うジャッカル退治のために遊牧民の兄弟に渡され、思いがけない事件を引き起こす。アメリカ人夫婦リチャードとスーザンはその事件に巻き込まれ、旅先で命の危機に直面する。

一方、メキシコでは、彼らの子どもたちの世話をしていた不法就労者のアメリアが、家族の事情で子どもを国境越えさせようとし、悲劇的な展開を迎える。東京では、ろう者の女子高生が父と二人で暮らしながら、孤独と疎外感に苦しんでいる。

一見無関係に見える人々の生活が、実は一本の糸でつながっていることが次第に明らかになり、言葉や文化、境遇の違いを超えて“人間の共通する痛み”が浮かび上がる。それぞれの物語は、誤解、断絶、そして希望を描きながら、観る者に深い余韻を残す。

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