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かこ
2025/06/09 21:05

【映画】『28日後…』感想・レビュー・解説

世界を混乱に陥れたのは、生き返ったゾンビではなく、感染によって凶暴化した“生きた人間”たちだった。

異色のパンデミックスリラーとして熱狂を呼んだ『28日後…』(2002)から始まったこのシリーズは、2008年の続編『28週後…』へと展開し、そして遂に、2025年6月20日、シリーズ最新作『28年後…』が公開されます。
 

最新作に向けて、まずは原点となる本作を振り返ってみましょう。

 

引用元:TSUTAYADISCAS


【あらすじ】
怒りを抑制する薬を開発中のとある霊長類研究所。ある夜、精神を冒し即効性の怒りを発するウィルスに感染している実験用チンパンジーが、侵入した動物愛護活動家たちによって解放されてしまう。その直後、活動家の一人がチンパンジーに噛まれて豹変、仲間に襲い掛かる。そして28日後。交通事故で昏睡状態に陥っていた自転車メッセンジャーのジムは、ロンドン市内の病院の集中治療室で意識を取り戻す。
ベッドから起き廊下をさまようジムだったが、院内にはまったく人の気配がなかった。人の影を求めて街へ飛び出したジムは、そこで驚くべき光景を目にする。
(引用元:allcinema)
 


【目次】
1.物語をより良く表現する為のロケ地
2.新しい"感染系ゾンビ"映画
3.ローテク・ローバジェット感
4.ウイルスより怖い人間
5.レイジウイルス、社会風刺と政治性
 

 


1.物語をより良く表現する為のロケ地


物語の舞台は、イギリス・ロンドンをはじめとするイングランド各地です。
ウェストミンスター橋
・国会議事堂(ビッグ・ベン周辺)
・トラファルガー広場
これらのランドマークが無人状態で登場します。

・M1高速道路沿い
ジムたちが都市を離れ、安全を求めて郊外へと車で移動します。

・田舎の農家
一時的に安息を得る場面として登場します。
 

・マンチェスター周辺の軍の拠点
後半の舞台は、軍人たちが立てこもる邸宅です。ここで物語はサバイバルから、人間同士の支配と暴力の問題へと展開していきます。

パンデミック後のイギリス社会の崩壊と、その中で露呈する人間性を描くため、都会と田舎、両方の風景を対比的に使っているそうです。
 

イメージ 引用元:CANVA



 


2.新しい"感染系ゾンビ"映画


本作に登場するゾンビ(感染者)は、厳密には死者ではなく、生きたまま感染した人間たちです。感染経路は噛みつきや唾液、血液など。
つまり死者の蘇りではなく、病としての変貌が描かれているのが特徴です。
 

まず、感染スピードが尋常ではない。
ひとたび噛まれれば、感染は一瞬。家族や友人が目の前で変わっていっても悲しむ間もなく、すぐに命の危機が迫ります。
 

次に、足が異様に速い!
走る感染者たちは、生きているからこその身体能力。怒りに突き動かされるように、全力疾走で人間に襲いかかってきます。
 



 


3.ローテク・ローバジェット感


撮影にはDVカメラ(Canon XL1S)が使用されており、粗い質感の映像がリアルさを際立たせています。まるでドキュメンタリーを見ているかのような生々しさが全編を覆います。
 

中でも印象的なのが、ロンドンの市街が完全に無人となるシーン。早朝に実際の街を封鎖して撮影されており、極度の孤独と不安が伝わってきます。人の気配が一切なく、生活音も消えた都市には、ただただ不気味な静寂が漂うのみ。


そしてこちらも印象的で、今にも危機が迫るなか、ふいに流れるクラシック音楽。
その優雅さと、目の前に広がる異常な光景とのミスマッチが恐怖を増幅させます。
個人的には、その美的センスにゾクッとしつつも、洒落てる!と思わず唸りました。
若かりし頃のキリアン・マーフィの演技と、グロテスクな世界観だからこそ際立つ彼の透明感も、必見です。
 


 


4.ウイルスより怖い人間


本作の恐怖は、ウイルスだけにとどまりません。物語が進むにつれ、感染者以上に恐ろしい“人間の本性”が浮かび上がってきます。
後半では、生き残った人々の狂気や倫理の崩壊が描かれ、作品にヒューマンドラマとしての深みが加わります。
 

特に衝撃的なのが軍人たちによる、女性を使って新たな世界を作り直す、という支配的な思想。そこに露わになるのは、暴力、支配欲、そして文明が崩れた後の理性を失った人間の本性です。
 

単なるホラーではなく、本作は“社会の縮図”としての側面も。終末世界を舞台に、人間という存在の脆さと危うさを鋭くあぶり出す、まさに社会の縮図のような作品と言えると思います。
 



 


5.レイジウイルス、社会風刺と政治性


人々を凶暴化させる“レイジ・ウイルス”は、ケンブリッジの研究施設で発生したウイルス。

その名が示す通り、怒り(Rage)の感情が感染源で、現代社会に潜む暴力性や抑圧された感情の爆発を象徴しているとも言えます。
 

物語には、動物実験や倫理の欠如、そして軍の存在といったテーマが織り込まれており、人間社会への鋭い問題提起が随所に感じられます。
 

それでもラストには、一筋の希望が描かれています。極限の状況でさまざまな恐怖と向き合い絶望を味わった末に、信じられるのは自分たちの意志だけ。そんな覚悟と力強さが感じられるエンディングです。
 


次のコラムは続編『28週後…』の解説です!
 



原題:28 Days Later...
監督:ダニー・ボイル
主演:キリアン・マーフィ
製作年:2002年|製作国:イギリス|配給:20世紀フォックス映画|上映時間:114分|映倫区分:PG12
(C)2002 TWENTIETH CENTURY FOX
 



 

 


読んで頂きありがとうございます♪



 

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1 件の返信 (新着順)
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2025/06/10 18:54

十何年前にみたのですが、主人公が誰もいない病院で目覚めるのが印象的で覚えています。
もう一度見てみたいと思いました! 
ゾンビ歩くの遅いかと思ったら全力疾走って逃げられないですよね。


かこ
2025/06/10 21:28

hideさんコメントありがとうございます😄✨確かに、ジムが病院で目が覚めるシーンは印象的でしたね✨
カメラのせいもあって、ザラついた質感が凄くマッチしていて好きです😊
ゾンビの足の速さったら!私も逃げ切れる自信はありません😂