エド・ウッドのX博士の復讐
【これは珍品…!】
(1970年・米/日・94分)
監督:ノーマン・アール・トムソン
脚本:エド・ウッド
原題:THE REVENGE OF Dr.X(Venus Flytrap)
エド・ウッドの脚本というだけで飛びつきました。原題は「Venus Flytrap」で“ハエトリグサ”のことです。
エド・ウッドの名前はクレジットされていませんが、彼が1950年代に書いた未公開の脚本に基づいており、ノーマン・アール・トムソン監督が脚本を大幅に書き直しているそうです。
ブラーガン博士(ジェームズ・クレイグ)は、NASAで宇宙ミッションに従事していましたが、仕事人間の彼はミッションのストレスで倒れてしまいます。助手のポール・ナカムラ(ジェームス・八木)は、博士には長期の休養が必要だと進言し、ナカムラの故郷の日本で過ごすよう提案します。ブラーガンはその申し出を受け入れました。
日本ではナカムラの従妹のノリコ(ローマ・アツコ)が案内役兼博士の研究の助手を務めます。
ブラーガンは、日本に発つ前にある所で食中植物のハエトリグサを入手しており、温室が必要だと言います。ノリコは、今は廃業しているホテルの大きな温室に案内します。
特に説明はなかったのですが、NASAでロケットを飛ばしていたブラーガン博士の本業は植物学なのだとか。そして、ノリコの専攻も植物学なので、助手を務めることになりました。
ノリコの案内で連れて行かれた場所は浅間山の近くにあり、ノリコが「活火山なの。」と説明している傍から大噴火。温室付きのホテルには、管理人のカワイという男が留守を守っていました。ブラーガンは休養のために日本に来たことも忘れ、ハエトリグサの研究に没頭します、途中からは海の食虫植物ベシキュローサと交配させることを思いつきます。人間の背丈程もあるベシキュローサを探すにあたり、海女さんたちの助けを借りますが、上半身素っ裸で登場する彼女たちは本物の海女さんらしいです。
ブラーガン博士が造り出す新生物は、所謂“植物人間”です。さらにブラーガンは人間の血を注入し、それが自力で動き回れるように改良(改造)します。
そこまでに至る実験風景では、まるで『ヤング・フランケンシュタイン』の一幕を観るようでした。実験の対象を天井高く吊り上げて、雷に打たせるあのシーンです。そう言えば、登場人物の構成もあの作品に似ているかも。博士によって生命を与えられた植物人間は、やがて村に下りて人間を襲い始めます。自身が造り出した新生物を愛するブラーガン博士は、運命を共にすることを決心します。あっけない結末を示して映画は終ります。
物語の殆どが日本で繰り広げられることを知らなかったので、何とも不思議な印象でした。『007は二度死ぬ(1967)』を思い出しましたが、意識していたのでしょうか。
英語のセリフ部分には日本語字幕が付いていますが、日本語部分に字幕はありません。でも、日本人が喋る日本語なので意味は分かります。難は、画質が悪いことです。昔のビデオを現在のテレビで観た時のような粗さと言ったらよいでしょうか。その点だけは覚悟が必要です。エド・ウッド風味がお好きな方には一見の価値があると思います。私は十分に楽しみました。