カッツ
2025/11/18 07:49
親切なクムジャさん
2005年公開の韓国映画『親切なクムジャさん』は、パク・チャヌク監督による復讐三部作の完結編であり、美しさと冷酷さを併せ持つ女性の復讐劇を描いた異色のサスペンスドラマである。
物語は、幼児誘拐・殺人の罪で13年間服役していた主人公クムジャが、実は無実だったという衝撃的な事実から始まる。模範囚として「親切なクムジャさん」と呼ばれていた彼女は、出所後、娘との暮らしを奪った真犯人への復讐を静かに、しかし着実に進めていく。
クムジャは、その美貌と冷静さを武器に、かつての受刑仲間や関係者たちを巻き込みながら、緻密な計画を実行していく。その姿はカリスマ的でありながらも、どこか現実離れしており、「他人のためにそこまでやるか?」という疑問を抱かせるのも事実である。その“非現実感”こそが、この作品の寓話性や象徴性を際立たせているとも言える。
映像は美しく、色彩や構図にも強いこだわりが感じられ、復讐という重いテーマを詩的かつスタイリッシュに描いている点が印象的。また、クムジャの内面に潜む怒りと哀しみが、静かな演技の中に滲み出ており、観る者の心を揺さぶる。
『親切なクムジャさん』は、単なる復讐劇ではなく、罪と贖罪、そして母性と正義のあり方を問いかける作品である。リアリティの枠を超えた表現の中に、深い人間ドラマが潜んでいる。
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