『劇場版 美しい彼〜eternal〜』公開1周年記念 レビュー
2021年11月に始まったドラマ『美しい彼』は、その後、2023年2月に続編である『美しい彼 シーズン2』を経て、2023年4月7日、ファン待望の映画化『劇場版 美しい彼〜eternal〜』として劇場公開初日を迎えました。
丁度1年経った2024年4月7日である本日、積年の想いと共にレビュー書かせて頂こうと思います。ただ、本作はドラマ版から劇場版に渡って繋がりのある作品ですので、ドラマの話も織り交ぜております。ご了承ください。
- 『美しい彼』とは
- 『美しい彼』にハマったきっかけ
- ドラマ『美しい彼』シリーズについて
- 『劇場版 美しい彼〜eternal〜』レビュー
1.『美しい彼』とは
『美しい彼』は作家・凪良ゆうによる日本の小説。2014年12月に刊行し、2015年BLアワードにて第1位を獲得。
多くのファンの支持を得ていたが、その後2021年MBSにてテレビドラマ化され、その後2023年テレビドラマのシリーズ続編が描かれ、直後、映画公開となった。
著者の凪良ゆうは2020年と2023年に2度の本屋大賞を獲得した作家であるが、BL作家としても有名であり中でもこの『美しい彼』は累計80万部突破する代表作である。
吃音症に悩む無口な高校生平良一成と、スクールカーストで頂点に君臨する圧倒的カリスマである清居奏。
そんな同級生二人の恋愛感情を描いたラブストーリー。
2.『美しい彼』にハマったきっかけ
2021年秋頃、テレビドラマ化が予定されていた『美しい彼』の予告ポスターで
その神秘的な青と、花に横たわる平良(萩原利久)と清居(八木勇征)の美しさに圧倒され、テレビドラマをリアルタイムで視聴したことによる。
3.ドラマ『美しい彼』シリーズについて
シーズン1のそのほとんどが平良一成の設定上、彼のモノローグで物語がすすんでいく。
平良は吃音症を気にして同級生の前ではうまく話すことはできないが、親や自分の胸の内ではその言葉がつっかえることなくすらすら出てくる。彼の信仰対象は、汚れた川をくるんとしたまつげで流れていくアヒル隊長である。
平良は進級の日の自己紹介の時点で周りから揶揄われるのが怖く、ますます臆病で無口になっていくのが定説だった。高校3年の進級の日、清居奏という人に出会うまでは。
自身の自己紹介の際、また吃音が出て笑われているところに、遅刻して入ってきた清居奏のオーラにみんなの興味は逸れていった。彼は平良の目をも奪うほどに、美しかった。
清居はその美しい見た目から、学校でカリスマ的存在として君臨したものの、彼の心は平良とは違った意味で孤独だった。周りに人は寄ってくるものの、下心が明け透けで、常に誰とも交差しない日々。
ところが、平良の、自分を見る真っ直ぐな瞳に興味を持ってしまい、パシリとして自分のそばに置いておくことで、二人の日常が変わっていった。そんな高校時代の繊細な恋愛感情を描いている。
シーズン2ではようやく付き合えたものの、平良が清居の事を”ファンとして”好きなことがひっかかる清居。何度言っても「彼氏として」自分を対等に見てくれない事が不満でたまらない。平良は無口ではあるが、内心頑固でネガティブ。清居がいくら平良の目線を引き上げようとも下から見上げる癖はなかなか直らないし、直そうともしない。そんな二人の日常が平良の成長によりステップアップする様を描いている。
ドラマシリーズは、学生ならではのみずみずしさと、無邪気な毒を含んだ心理描写に圧倒される。
映像は、大注目のクリエイター酒井麻衣が監督を務め、カラフルな色調と映画さながらの美しさ、秀逸なロケ地の使い方が大評価を得た。
脚本は坪田文。原作のあり・なしに関わらず幅広いジャンルの脚本を手がけた経験によって、小説原作の世界観を崩す事なく、見事に書き上げた。
両者とも、原作者の凪良ゆうと仲が良く、さらにはプロデューサーも交えてのご飯会などで親睦を深め『美しい彼』関連のイベントに揃って顔を出すほどチーム仲が良い。(余談です)
シーズン1のイメージカラーは青
シーズン2のイメージカラーは紫(ラベンダー)
4.『劇場版 美しい彼〜eternal〜』レビュー
柔らかな音楽と共に、心洗われる映像美に目を奪われる。
たっぷりの光を含んだオーガンジーの上、桜が舞ったり、緑豊かな川辺を自転車で駆け抜けたり、夏の花火や、秋の金木犀など。
20代前半の若者主体のストーリーなのに、どこかノスタルジーを感じる光景は、平良の実家の古き良き日本家屋と、山梨県上野原市の自然豊かなロケ地に起因する。
ダサいと清居に揶揄されながらも、カメラマンアシスタントである平良一成はどこか品があるし、清居は就職し、芸能活動を始めているだけあって新人俳優としてますます見た目に磨きがかかっている。
お互いがお互いを思っているのに、分かり合えず、ずいぶんと長い時間、すれ違い続けていた平良と清居だが、つきあってからも分かり合えないのは変わることがない。
芸能活動をする清居を、彼氏としてというよりファンとして好きな平良。
学生時代からの下僕根性は変わらず、日頃、カメラマン・野口大海(和田聰宏)のアシスタントをする傍ら空き時間で清居の熱烈な追っかけをすることをルーティーンとしている。
清居には事務所の先輩である安奈(仁村佐和)という売れっ子若手女優がいて、まだまだ駆け出しの清居にとっては仕事は専ら安奈のバーターである事が多い。
そんな同事務所の二人は仕事が重なる事が多く、清居の追っかけをしている平良は、ある日、安奈の熱烈ファンである設楽(落合モトキ)と仲良くなり、一緒に追っかけを楽しむのであった。
ファンと一般人────────
それが、通常の図式ではあるのに、平良の場合は他とは違う。
芸能人と付き合う一般人(カメラアシスタントだから、芸術家の卵とでもいうべきか)なのだ。
平良の家には大好きな推し(清居)がいて、毎日がドキドキで溢れかえっている。
夢物語みたいなストーリーだが、清居にとって平良は、一般人のときから一緒にいる同級生であり彼氏である。変装してまで自分の追っかけをしてくる異様な恋人が、全然自分の思う通りに”普通にしてくれない”のでヤキモキしている。
とある事件を発端に、清居は安奈の熱烈ファンである設楽に誘拐され、思わぬところで平良の”彼氏力”を知ることになる清居ではあるが、今までの平良とのギャップで観客をもキュンとさせるところが恐ろしい。
清居囚われのシーンも見事な映像美ではあるが、圧巻のラストシーンに着目してほしい。
ウエディングのタキシードとドレスに空目する衣装の平良と清居が、高校の校舎で手を繋いで駆け出すシーンは『美しい彼』と掲げる主題に一ミリの遜色もない。
ラストシーンと前述したばかりだが、本編はこれで終わらず。
W主演の一人である平良役の萩原利久が自らカメラを持って、愛する清居役の八木勇征を、総アドリブで撮影するシーンも見どころの一つ。
エンドロールに流れる【ファインダー越し撮影 平良一成(萩原利久)】は、当初劇場に足繁く通う中、何度も確認し、何度もじんわりときた。
もちろん、エンドロール前の今度こそ心通い合った二人のラブシーンは美しく、何度見ても幸せな気持ちになる。
どうかひらきよ(平良と清居の愛称)、エターナルに幸せであれ。
第三者目線には、思い合ってる幸せな恋人同士であるのに、二人はいつもちぐはぐな事を理由についたり離れたり、を繰り返している。
そんな二人を応援したい気持ちが『美しい彼』の醍醐味であり、いわば毎週日曜に放送されるサザエさんくらいの変わらなさと愛おしさなのである。
同じように沼にハマってくれる方が居ればと望みます。
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投稿を表示ドラマがあって、映画化されて、毎日映画コンクールで受賞して...そして、1年。1年越しの本作だと、やはり印象や初見の時とはイメージが色々変わりますね。そして、変わらなく良い部分も感じられますね✨
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