余韻が最高、家族の絆と友情を描いた『スウィート・シング』
『スウィート・シング』
2020年 アメリカ🇺🇸 91分
昨年観たばかりですが、とても好きな作品となりました。
おおまかなあらすじ
普段は優しいが飲酒で度々トラブルを起こす父親アダムと暮らす15歳のビリー♀と11歳のニコ♂。母親のイヴは別居し、他の男と暮らしている。
姉弟は、学校にも行かず、自動車整備工場の依頼で、自動車のタイヤを故意にパンクさせたり、ゴミ拾いをしたりと小銭を稼ぐ日々。毎日がギリギリの生活で、親にも頼れない家庭環境が伺える。家庭環境に少なからず問題を抱えている2人だが、父アダムを慕っている。
アダムがアルコール依存で入院し、保護者が居なくなった2人は母親イヴの元へ向かう。そこで出会った近所の少年マリクと仲良くなるが、ある事件が起きて、ビリー、ニコ、マリクの子供たち3人で逃走を図る。
『宝物みたいな1日だった』
この映画のキャッチコピーがとてもいいんです。
ポスターにもなってますが、3人の子供たちの束の間の冒険が、あの名作『スタンド・バイ・ミー』を彷彿とさ、子供たちのあどけなさ、楽しさ、優しさ、息苦しさ、様々な感情が押し寄せてきます。
2020年制作の作品ですが、映像と音声が同期したトーキー映画のようなオープニングが実にユニーク。16ミリフィルム撮影、全編モノクロの映画と思いきや、生きづらい生活の中で、子供たちがキラキラと輝く、そんな要所要所のシーンでカラーになりますが、まさに『宝物みたいな1日だった』を表現していました。
そういえばジャンルは違いますが、スティーブン・スピルバーグ監督の名作『シンドラーのリスト』もパートカラーを使ったり、現代パートはカラーにするなど一本の映画で使い分けていました。
父親アダムが大好きなビリー・ホリデイにちなんで、名前を与えられたビリー。彼女の空想の中で、いつもビリー・ホリデイがそばにいてくれているんですね。
ロックウェルファミリー
この映画は、ロックウェルファミリー、本当の家族が参加して作り上げた作品です。
父:アレクサンダー・ロックウェル (本作の監督)
母:カリン・パーソンズ (母親イヴ役)
姉:ラナ・ロックウェル (ビリー役)
弟:ニコ・ロックウェル (ニコ役)
監督のアレクサンダー・ロックウェルは、アメリカのインディペンデント映画(自主制作映画)の旗振り役ジム・ジャームッシュやスパイク・リーなど錚々たる監督と肩を並べるぐらい著名な監督とか。日本ではあまり知られていないような気がしますが、1992年の『イン・ザ・スープ』は、スティーブ・ブシェミを主演に迎え、第8回サンダンス映画祭でグランプリを受賞した作品のようです。
そしてロックウェル監督の前妻は、なんとあの『フラッシュダンス』のジェニファー・ビールス。製作には俳優のサム・ロックウェルとジェニファー・ビールスが参加しています。サム・ロックウェルは、ロックウェル家の親戚か何かなのか?と、調べてみましたが分かりませんでした。(謎です)
ちなみに、父親アダムを演じたウィル・パットン。『アルマゲドン』『ミナリ』などにも出演した名バイプレイヤーです。本作のラストシーンで最高の演技をしてくれました。
VAN MORRISONの曲「Sweet Thing」が素晴らしい
ビリー・ホリディの影響で、ビリーは歌やギターが大好き。アダムからプレゼントされたギターを弾きながらビリーが歌う『Sweet Thing』。ヴァン・モリソンの『Sweet Thing』という曲なんですが、この曲がとてもいい。直訳すると『甘いもの』ですが、映画の中では『愛しい君よ』と表現してました。この映画にピッタリの名曲ですので是非聴いてみてください。
忘れなれないラストシーン
3人の子供たちのひと時の冒険のラスト10分。いまだに、その衝撃と感動は忘れられない。優しく希望に満ちて感慨深いラストシーンは何回も見直しました。
観終わった後の余韻が最高。
これぞ映画です。
予告編
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