1958年公開、アーネスト・ヘミングウェイ原作、すでに文学古典として知られている。物語は、キューバの老漁師が巨大なカジキと孤独な闘いを繰り広げるという、極めてシンプルな構造を持つが、その中に人間の尊厳、自然との対峙、そして生きることの意味が凝縮されている。
映画は淡々と進行し、派手な演出や劇的な展開はない。しかしその静けさこそが、原作の持つ詩的なリズムと深い精神性を映像として見事に表現している。老人、海、少年、魚――それぞれが象徴的に描かれ、まるで小説の一節がそのままスクリーンに映し出されたかのような印象を受ける。