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【Foyer vol.1+:ワークシネマパラダイス】代表・細田侑 単独インタビュー| 菊川で生まれる、まちと人の新しい関係。

墨田区・菊川にあるミニシアター「Stranger」の建物の2階に、ユニークな空間が誕生した。その名も「ワークシネマパラダイス」。映画館の真上にあるコワーキングスペース──映画から得たインスピレーションをそのまま仕事につなげる。映画をきっかけに、人とまちが出会う交差点。そんな「ワークシネマパラダイス」を手掛けたのが、まちづくりや地域コミュニティのデザインに携わってきた細田侑さん。Strangerとも連携しながら、まちと人、文化と日常をゆるやかにつなぐ場所をつくりあげてきた。

 

映画館の上で、仕事してみたら面白いかも


きっかけは、コロナ禍の2020年にスタートした屋外映画イベント「すみだパークシネマフェスティバル」。隅田公園を中心に、映画とまちの関係をより深める試みは、じわじわと広がり、今年5年目を迎える今も地域の人々に愛されている。
そんな活動の中、2022年にオープンしたミニシアター「Stranger」との出会いがあった。当初はあまり接点のなかった両者だが、新体制になったStrangerが「地域ともっとつながりたい」と声をあげたことが転機となった。

「Strangerの建物の2階が空くって話になって、どうしようかってみんなで考えたんです。映画館の上で働ける場所って、あんまり聞かないじゃないですか。面白いんじゃないかなと」
こうして生まれたのが、映画と仕事のある日常が交差する空間、「ワークシネマパラダイス」だ。

 

 人が行き交う語れる場


ワークシネマパラダイスの利用料金は1日2,000円と比較的リーズナブル。地元の常連も少しずつ増え、平日には8〜9名ほどが利用するようになったという。映画を観てから働く人もいれば、ただ黙々とPC作業をする人もいる。使い方はさまざまだ。
「映画を観てから働くっていうより、映画館がある場所で働くって感覚に近いかもしれません。ストレンジャーで上映している映画って、わりとモヤモヤするものが多いから、誰かと話したくなる。ここはその受け皿になれたらと思ってます」 

 毎月1日に開かれる映画を語り合う交流会や、ゴミ拾いをした後に映画を語り合う「CCCC(Cleanup&Cinema Coffee Club)」など、定期的にイベントを行っている。近所に住む人、最近引っ越してきたクリエイター、たまたま立ち寄った映画ファン……。さまざまな人がこの場所で出会い、会話を交わしていく。
「このあたりって、意外と“語れる場所”がなかったんだなって実感します。映画の感想って、誰かに言葉にして届けたくなるんですよね」

 

働く場所ではなく、集う場として


細田さんの活動の根底には、「居場所」をつくるという強い思いがある。人と人が安心して関われる“場”をつくることは、自分自身の探求でもあった。
「いろんな人の居心地の良さって、バラバラなんですよね。だからこそ、“関係”そのものをデザインしていく必要がある」
コワーキングスペースとして利益を求めるなら無人にするところだが、ワークシネマパラダイスでは、映画とまちをつなぐシネまちコミュニケーターという役割を担ったスタッフが常駐している。細田さんの会社の理念である「表現の行き交う関係をつくること」。映画を媒介にして、仕事、暮らしが交差する場所としてのワークシネマパラダイスは、その理念の体現していると言える。

 

「映画見て、楽しく働こう。」


取材の最後、細田さんがぽつりと口にしたこの一言に、ワークシネマパラダイスという場所のすべてが凝縮されていた。
上映中の映画が気になって、ふと階段をのぼる。するとそこには、パソコンを開いた誰かと、コーヒーを片手に雑談する誰かがいる。
暮らしと文化がやさしく混ざり合うその空間は、今日も菊川の空の下で扉を開けている。
 

ワークシネマパラダイス

公式HP:https://workcinemaparadise.com/

インスタグラム:@workcinemaparadise

 

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1 件の返信 (新着順)
Stella
2025/07/11 06:16

Strangerは、結構いいコンセプトの映画館ですね。ワークシネマパラダイス納得です。