カッツ
2025/11/29 19:34
座頭市物語(1962年4月18日、モノクロ)
出演:勝新太郎、天知茂、万里昌代、島田竜三、柳永二郎、毛利郁子、中村豊、南道郎、ほか
勝新太郎主演によるシリーズ第一作であり、後に長く続く「座頭市」映画の原点となる作品である。盲目の按摩師でありながら剣の達人という座頭市のキャラクターは、当時の時代劇に新鮮な衝撃を与えた。モノクロ映像の中で描かれる市の姿は、哀愁と迫力を併せ持ち、観る者に強い印象を残す。
物語は、博打場ややくざの抗争に巻き込まれる市の生き様を中心に展開する。盲目であるがゆえに弱者として扱われながらも、剣を抜けば圧倒的な強さを見せる。その二面性が、座頭市という人物を単なるヒーローではなく、人間的な魅力を持つ存在として際立たせている。
また、勝新太郎の演技は、ただ剣を振るうだけでなく、市の孤独や哀しみを表情や仕草に滲ませており、観客に深い共感を呼び起こす。派手な事件や大規模な戦いがあるわけではないが、静かな緊張感と人間ドラマが作品全体を支えている。
シリーズの出発点として、この映画は「弱者の視点から描かれる時代劇」という新しい可能性を提示した。座頭市の物語は、単なる娯楽を超えて、人間の尊厳や生きる力を問いかける作品となっている。
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