スクリーンで音楽を聴く 伝説のミュージシャン「トノバン」
加藤和彦=トノバンの足跡をたどったドキュメンタリー映画です。かのフォークル、フォーククルセダーズメンバーでバンド解散後もプロのミュージシャンとして、サディスティック・ミカバンド拠点をロンドンに移しロキシー・ミュージックやフリーウッドマックの前座をつとめて注目されたました。
その数年前にフォークルの再結成(限定1年間の復活)があり、そのコンサートを数回見にいきました。その以前から北山修さんがレクチャー&コンサートという催しがあって、よく見にいってました。わたしの生まれた時代にはもうフォークルは存在してませんでしたが、あの数曲の作品はその後もラジオから流れてきて、何気なく興味を持っていました。また北山修は自切俳人(ジギルハイド)という名前でラジオのパーソナリティをしており、そのヘビーリスナーであったわけです。ここを通じて加藤和彦という存在を知りました。学校の音楽の教科書に北山修・加藤和彦作品の「風」がありました。この懐かしさをそそる甘いメロディとシンプルかつ分かりやすい歌詞は現世代でない私にも響きました。
加藤和彦はプロデューサー的、一目置かれる存在で竹内まりやなどのアーティストに楽曲を提供していた大家で、業界では尊敬のまなざしで見られる人物でした。前述のコンサート開演前に会場ロビーでお客さんと話しているご本人を見ました。身長が高く、ダンディでかっこいい人でした。その後、突然の訃報に驚きました。自らの命を絶ってしまったのでした。
映画はそのフォークル時代にかかわった人々(ラジオ局、レコード会社のひとたち)のインタビューとロンドンでプロデューサーを務めたクリス・トーマスなど、加藤和彦と旧知のひとたちの証言で綴られていきます。彼の功績を令和でもう一度、振り返ってみるという作品です。
改めて加藤和彦作品を聞くと、この時代にこんな先端的でアグレッシブな楽曲を創作していたことに感嘆しました。日本のミュージックシーンは歌謡曲というカテゴリーのなか、アイドルや演歌、ムード歌謡などが混在していました。ロックやポップスなどはまだ馴染めていなく、一部の洋楽マニアによる嗜好品でした。出演者には、加藤和彦とかかわった高中正義、高橋幸宏、松任谷正隆、坂本龍一など、その後日本のミュージックシーンをリードするミュージシャンたちです。それら後輩たちに多大な影響を与えていたことを再認識します。
彼の残した音楽の秀逸さを感じさせるのは、鑑賞したこのミニシアターの音響の良さなんです。この作品はスクリーンで観ないと、この良さや偉大さは満喫できないでしょう。フォークル時代の曲はシンプルで歌いやすいと聞こえますが、これは歌ってみるとけっこう難曲なんです。イントロが実に決め細かいコード進行であることも、シアターが再現してくれます。
「あの素晴らしい愛をもう一度」を聞いていると、へたなアイドル歌手が多数で歌っていた某曲と酷似していたことを発見しました。パくったな~
終盤、長年の友人である北山修が、死を選択したことについて語ります。加藤和彦が極度の躁うつ病にかかってしまったとき、医師を紹介したのは北山修でした。自身も精神科医であり、近すぎる患者は診れないということで、紹介したそうです。こういう結果となって、自分が診療すべきだったと悔やんでいたのを、何かの記事で読みした。北山修は自分たちの見ていた加藤和彦と違う加藤和彦がいたと述懐します。
鑑賞した京都は本境地でもあり、客席はほぼ満員でした。このてのドキュメンタリーは上映期間が限定されるものなのですが、かなり長期間公開されてました。またこの10月にアンコール上映されるようです。
ラストは北山修らと二世シンガーによる「あの素晴らしい愛をもう一度」で締めます。WE ARE THE WOLRDを模したようで、なんかおかしかったです。
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投稿を表示僕も京都シネマで観ました。
そうですね。 音のことを考えると劇場で観ないと。
加藤和彦に捧げられたいい映画でした。