やっぱりまた観たくなる「荒野の七人」
「荒野の七人」 (1960年・アメリカ) 監督・製作:ジョン・スタージェス
私の中で西部劇の最高傑作! 何度観ても「七人」のカッコ良さに痺れてしまう。
黒澤明監督の「七人の侍」(54年)のリメイク...この言葉が常に付いてまわるのが、やや鬱陶しい気持ちもあるが、西部劇の流れを大きく変えた永遠の名作として評価したい。
メキシコの静かな寒村に、毎年収穫期になるとカルヴェラ(イーライ・ウォラック)率いる盗賊がやって来る。村人達は恐怖に慄いていたが、長老の進言により、村人3人が銃を入手するためテキサスへ向かう。そこで全身黒ずくめのガンマン、クリス(ユル・ブリンナー)に会い、村人達は銃の購入について相談する。ところがクリスは、高い銃を買うより用心棒を雇えとアドバイスする。
村の窮状を聞かされたクリスは、貧しい農民たちを救うため、たった20ドルの報酬でその仕事を引き受ける。
果たして、クリスは人集め(ガンマンたちを集める)ことから始めるのだが...。
1人、また1人と、クリスの仲間に加わっていくシーンがとてもいい。
僅かな賃金で雇われたガンマン達は、次の面々である。
クリス:ユル・ブリンナー(1920.07.11 ~ 1985.10.10)
自分の信念を決して曲げないリーダー。感情を表に出さないが、心は熱い。
ヴィン:スティーヴ・マックィーン(1930.03.24 ~ 1980.11.07)
クリスの右腕で早撃ちの名人。銃撃戦では芸術的な身のこなしをみせる。
オライリー:チャールズ・ブロンソン(1921.11.03 ~ 2003.08.30)
凄腕のガンマンだが心優しく、7人のなかで最も子供たちから慕われている。
ブリット:ジェームズ・コバーン(1928.08.31 ~ 2002.11.18)
ナイフ使いの名人。1対1の決闘シーンでは、銃よりも早く相手を射る凄技をみせる。
リー:ロバート・ヴォーン(1932.11.22 ~ 2016.11.11)
暗い過去を引きずる賞金稼ぎだが、凄腕の早撃ちガンマン。
ハリー:ブラッド・デクスター(1917.04.09 ~ 2002.12.12)
大金を夢見るガンマン。20ドルの報酬を信じず、もっと大きな狙いがあると思っている。
チコ:ホルスト・ブッフホルツ(1933.12.04 ~ 2003.03.03)
農民出身で、クリスに憧れている若者。盗賊との戦いの後、村の娘と結ばれる。
実はクレジット2位で登場するのが、イーライ・ウォラック(1915.12.17 ~ 2014.06.24)で、盗賊の
首領カルヴェラを悪魔的に演じている
今思えばかなりの豪華キャストだが、当時、世界的なスターとして君臨していたのはユル・ブリンナーくらい。彼は「王様と私」(56年)でアカデミー主演男優賞を既に獲得していた。
一方、スティーヴ・マックィーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンらは、本作の出演によって大スターへの道を駆け上がっていくことになる。
ロバート・ヴォーンもTV「0011ナポレオン・ソロ」シリーズでブレイクし、その後は再度スティーヴ・マックィーン主演作にも出演している。
ドイツ生まれのホルスト・ブッフホルツも、本作を起点にハリウッド映画、欧州映画の作品に数多く出演している。
本作では正義を表す絶対的なヒーローは一人もいない。
ラストも決してハッピーエンドではない。
西部劇そのものに変化が訪れてきている時代だったと思う。
ガンマンが荒野を切り開いた時代は終わり、流れ者としての存在が強調されていく作風は、やがて到来するマカロニ・ウエスタンの時代を予感させる。
ジョン・スタージェスは多くの西部劇を監督している。
56年「六番目の男」、57年「OK牧場の決斗」、58年「ゴーストタウンの決斗」、59年「ガンヒルの決斗」、67年「墓石と決闘」、72年「シノーラ」、73年「さらばバルデス」等々である。
本作の続編として、「続・荒野の七人」(66年、バート・ケネディ監督)、「新・荒野の七人/馬上の決闘」(68年、ポール・ウェンドコス監督)が製作されているが、本作には遠く及ばない。
ただ、ハリウッド西部劇の終焉とは思いたくないのだ。決して...。
最後に、本作の音楽を手掛けたエルマー・バーンスタインの功績も大きい。
勇壮なメロディーは作品に力感を与え、まさにジャズ風サウンド・トラックの先駆けといえるものだった。