ノスフェラトゥ
【ドラキュラと日の出まで】
(1978年・西独/仏・103分・カラー)
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
原題:Nosferatu:Phantom der Nacht
原作:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』
11年ぶりの再見。
先日鑑賞のムルナウ版よりも原作小説に近い。特に登場人物の名前が「ドラキュラ伯爵」「ジョナサン・ハーカー」「ルーシー・ハーカー」「レンフィールド」「ヴァン・ヘルシング教授」と原作どおりなのが分かり易くてよい。(ただし、原作における妻の名はミナだった。本作では友人の名前と交換されていた。)
本作の主人公ドラキュラ伯爵を演じるのは、クラウス・キンスキー。その容貌は、丸い坊主頭にネズミのように尖った前歯、長い爪で、彼の歩く姿は「気をつけ」の姿勢のまま浮遊しているかのようである。
ジョナサンの妻ルーシーを演じているのはイザベル・アジャーニで、まだ23歳のアジャーニはとても魅力的だった。当然、本作のドラキュラ伯爵もこのルーシーの美しい喉に魅了されるのである。
今回の再見の目的は、ルーシーがドラキュラを倒すために犠牲になるラストシーンの確認だった。ルーシーはジョナサンが持ち帰った解説書に記載されていた通りに実行するのであるが、その本に書かれていた文章とは・・・
《 女の清らかな魂に捕われ 夜明けを忘れ 朝日を浴びれば消滅する 》
ルーシーはベッドに横たわり、ドラキュラ伯爵の前に白い喉を仰け反らせる。ドラキュラの長い前歯が彼女の喉に突き刺さる。時折、ドラキュラはルーシーの喉から口を離すのだが、ルーシーがドラキュラの腕を掴んで彼女に注意を向けさせる。そして、朝日が部屋の中にまで達した時、ドラキュラは苦しんで床に倒れたのだった。
倒れたドラキュラの姿を見たヴァン・ヘルシング教授は、「杭と槌」でドラキュラの胸を突き刺したのである。
本作には更に続きがあり、ヘルシング教授がドラキュラにトドメを刺した丁度その頃、ジョナサンが彼の左胸を抑えて苦痛の表情をする。ジョナサンの口元にはドラキュラ伯爵そっくりの前歯が見えており、ジョナサンはその後、馬に跨って砂漠のような所を駆けて行ってしまう映像で終わった。
多分、あのドラキュラ城に向かったのではないかと思われる。
ムルナウ版でも本作でも、自ら人身御供(ひとみごくう)となった女性の最期の姿は神々しく美しかった。
ところで、ドラキュラの眠る棺と一緒に陸揚げされた夥しい数のネズミと、それらが撒き散らしたペスト菌により大量の死者が出たシーンが、「街の退廃」「最後の晩餐」「彷徨うルーシー」というように幻想的なシーンとして印象に残った。
ペストの歴史は古代にまで遡ることが出来そうだが、その解説の一文に「ペスト菌は、日光や乾燥、熱に対する抵抗は弱い」という記述があるのを見つけた。これらの事実を知った上でドラキュラの特徴や弱点の設定が為されたのだとしたら、原作者や脚本家は、やはり凄いなと思った。
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示このジャンルにおける、かずぽんさんの ‘こだわり’ は、ホント羨ましいです。
関連作品も含めて、幅広く再見されておられるところから、こだわりが生まれてくるのでしょうか。
再見の目的もはっきりと述べられていて、分かりやすいですね。
>彼の歩く姿は「気をつけ」の姿勢のまま浮遊しているかのようである。
こういった独特の表現、かずぽんさんならではですね。
個人的には、ヴェルナー・ヘルツォーク監督+クラウス・キンスキーといえば、
「フィツカラルド」(82年)が思い起こされます。