hiyu
2024/05/24 10:35
社会の闇と病み、そして光。『ミッシング』
こんにちは。hiyuです。5/17より公開中の𠮷田恵輔監督の『ミッシング』を鑑賞してきました。重く辛い内容ですが、同時に心に訴えかけてくる素晴らしい作品でした。観てきた感想についてお話したいと思います。
吉田監督の確かな演出力
冒頭、とある母娘の微笑ましい日常の断片が描写されます。自然光の美しさも相まって、そのかけがえのない幸福さがとても印象的な場面です。
しかし、その直後に突然行方不明になった娘を必死に探す夫婦の姿が描かれます。幸せに満ちた日々からの辛く虚無な日々。そのあまりの落差に一気に作品の世界に引き込まれてしまいました… 愛する娘の行方を探す夫婦を取り巻くSNSでの誹謗中傷やマスコミの偏向報道。少女の失踪事件に翻弄される者の心情と再生を吉田監督の確かな演出力によって、繊細かつ生々しく描かれていきます。
演者さんの演技
本作を語る上で欠かせないのが演者さん達の演技。ガサガサに荒れた唇と傷んだ髪の毛、やつれきった表情で心を失い壊れていく母親を演じきった石原さとみさんには圧倒されました。ヒステリックに当たり散らした次の瞬間、藁にも縋るが如く相手へ必死に泣きつく場面は、子供の身を案ずる母親の悲しみや絶望を体現しているようでした。
反対に不安定な妻を支える夫を演じた青木崇高さんは、抑えた演技が印象的でありながらも、失踪した娘を想う父親を見事に表しており、観る者の心を震わせます。特に喫煙所で他の親子の仲睦まじい様子を見つめている時の表情には… 不覚にも泣かされてしまいました。
最後に
本作は人間の悪意を描きながらも、人間が持つ善意や連携から生まれる希望を描いています。重く辛い作品なのに鑑賞後が晴れやかなのは、そこに優しさと光があるから。この素晴らしい作品がひとりでも多くの人に届けば嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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