しらたま
2025/02/19 17:07
167分にイラン社会が強烈に詰め込まれた一作
アカデミー賞国際長編映画賞選出、カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞、そして映画製作で罪に問われたモハメド・ラスロフ監督作品。
これだけでとんでもない映画だと想像がつきますが、ありがたいことに試写会にて鑑賞させていただく機会がありました。

舞台は反政府運動が激化するイラン。実際にSNSへあげられたデモの様子を多く使ったドキュメンタリー要素と、そこへ投入されていく家庭内サスペンススリラー要素が複雑に絡まりあっていきます。

今作で初めて、映画内で本物の遺体をみました。
暴力、拉致、血溜まり、そして遺体と、イランの惨状をこれでもかと訴えてきます。
そしてストーリーの後半では、ひとつの家族が崩壊していく様を見ることになります。
また「聖なるイチジクの種」というタイトルについて、映画冒頭にも説明がありますが、イチジクは鳥のフンに混ざった種が木の根元に落ち、その木を宿主として成長し、最終的にその宿主を枯らしてしまうそうです。
果たしてイチジクの種は誰(または何)なのか、そして枯れてしまう宿主は誰(または何)なのか、観た人によって解釈が変わるかもしれませんが、文字通り考えさせられるラストが待っています。
随所に散りばめられたメタファーも、鑑賞後に思い返すとゾっとするものがいくつもあります。
悲惨な場面、グロテスクなシーンもありますが、イランのリアルを伝えてくれる素晴らしい作品でした。
映画に携わった方々は、パスポート没収や取り調べを受けるなど、大きな弊害を受けています。(娘役のお二人は早い段階で国外脱出できたそうです。)そこまでして作りたかった作品、ぜひ鑑賞して製作陣の想いを受け取ってほしいです。
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