カッツ
2025/10/12 07:46
潜水服は蝶の夢を見る
観ていて本当に辛かった。最初は途中でギブアップしてしまったが、二度目の挑戦でようやく最後まで観ることができた。
この作品は、全身麻痺となった男性が、唯一動かせる左目のまばたきだけで意思を伝え、自伝を書き上げたという驚くべき実話をもとにした映画である。まるで自分が全身麻酔を受けているかのような感覚に陥り、観ているだけで息苦しくなるほどの体験だった。あまりの過酷さに「死んだほうがましかもしれない」と思ってしまう瞬間もあったが、それでも、死にゆく人の内面に触れるには、この映画ほど深く迫れる作品はないかもしれない。
彼は、アルファベットの一文字一文字をまばたきで選び、20万回のまばたきを重ねて一冊の本を完成させた。それが、ジャン=ドミニク・ボビーによる自伝『潜水服は蝶の夢を見る』である。彼はその完成からわずか10日後に亡くなった。
この映画は、身体の自由を奪われた人間が、なおも「生きる」ことを選び、言葉を紡ぎ、夢を見る姿を描いている。静かで美しく、そして残酷なほどに真実に満ちた作品だった。
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