私の好きな映画

cine-ma
2025/08/03 00:12

2025年に観た映画(35) 「はじまりのうた」

ジョン・カーニー監督作「シング・ストリート 未来へのうた」は私にとって2016年観賞作のBest1でした。日本ではその前年の2015年に公開された本作。先月WOWOWで放送されたばかりで録画済み(未見)だったのですが、このタイミングでのリバイバル上映を知り劇場へ。

場末のライブハウスで幕を開ける本作。
友人に促され渋々ギター1本で披露したグレタ(キーラ・ナイトレイ)の歌声が店の騒音にかき消される中、ただ一人聴き惚れる落ち目の音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)。人生のどん底の局面で出会った二人が企む再生の物語。まるで丹下段平が矢吹ジョーを見初めたかのような滑り出し。

全編が音楽で彩られているのは「シング・ストリート」同様ですが、最初はパッとしない歌声と曲にしか思えなかったグレタの弾き語りが、お話が進むにつれてどんどん魅力的になってゆく。まるでこの映画全体に音楽の魔法が掛けられているかのようでもあります。担当したグレッグ・アレクサンダーとジョン・カーニー監督自身の手によるオリジナル・スコアがシーンを盛り上げるその展開に、この監督は映画を撮りたいのか、それとも音楽をやりたいのか、その主従関係を疑いたくなってしまいました。

監督の音楽的趣向に波長が合ってしまえば、中盤以降は実に心地よい。デモテープを作り上げる“旅”の工程と共に、ダンとグレタの心の傷が癒えていく展開を、観客も優しく見守る。ダン親子の共演に胸が熱くなる。人畜無害な最高の友人スティーヴ役をジェームズ・コーデンが好演。そして常に、音楽とその小道具達が作品を盛り上げる。"No Music, No Movie"とでも言いたくなる作品。
清々しくてハートウォーミングな、でもってちょっと痛快なお話。観終わって気持ちよく劇場を後にしたのでした。

№35
日付:2025/7/27
タイトル:はじまりのうた | BEGIN AGAIN
監督・脚本:John Carney
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン1
パンフレット:あり(¥1,000)
評価:6.5

(C)2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED
(C)2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED
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公開当時のパンフレット(¥1,000)
  • イントロダクション
  • ストーリー
  • インタビュー 坂本美雨
  • インタビュー キーラ・ナイトレイ × マーク・ラファロ × アダム・レヴィーン
  • キャスト
  • インタビュー ジョン・カーニー監督
  • 音楽がつなぐ心、人生のきらめく瞬間 今祥枝(映画ライター)
  • PLAYLISTS
  • Gretta's Fashion 画:おおたうに
  • LOCATION MAP
  • 音楽が溢れ混じり合う街、ニューヨーク 中村明美(映画/音楽ライター)
  • 物語を彩る“真珠の輝き”を放つ多彩な音楽 村尾泰郎(映画/音楽ライター)
  • プロダクション・ノート
  • スタッフ

 

 

 

 

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