シュールさとマルチバースが同居する片山慎三監督によるつげ義春ワールド『雨の中の欲情』
■雨の中の慾情
《作品データ》
つげ義春原作の短編漫画を『岬の兄妹』や『さがす』を手掛けた片山慎三監督が映画化したシュールなラブロマンス!漫画化の義男はアパートの大家・尾弥次から小説家の伊守と一緒に引っ越しの手伝いを頼まれ、その新居で福子と出会い、彼女の妖艶な魅力に惹かれ、彼女が勤めている喫茶店に通うようになる。やがて義男は伊守に誘われ自らが企画するPR誌を手伝うことに。主人公・義男役を成田凌が演じ、他森田剛、中村映里子、竹中直人、足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐薰、伊島空、李杏が出演。
・11月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー【R15+】
・配給:カルチュア・パブリッシャーズ
・上映時間:132分
【スタッフ】
監督・脚本:片山慎三
【キャスト】
成田凌、森田剛、中村映里子、竹中直人、足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐薰、伊島空、李杏
公式HP:https://www.culture-pub.jp/amenonakanoyokujo/sp/
《『雨の中の慾情』レビュー》
「ねじ式」や「無能の人」、「リアリズムの宿」など地味ではあるがシュールで味わいがある漫画や紀行小説を手がけるつげ義春原作を元にし、『岬の兄妹』や『さがす』を手掛けた片山慎三監督が映画化した成田凌主演映画『雨の中の慾情』。つげ義春原作でもエロに特化し、前半、中盤、後半と変化に富んだ展開、めくるめく夢・幻想を重ね合わせた演出を多用し、
シュールさや夢・幻想演出、エロスたっぷりのつげ義春ワールドに仕上がっている。
冒頭のシーンこそはつげ義春原作の「雨の中の慾情」の再現になるが、大半は「隣りの女」、「池袋百点会」、「夏の思いで」といったつげ義春原作作品を繋ぎ合わせた展開に、「ねじ式」で見られるような目のオブジェや女性との情事のシーンの多さなどつげ義春ワールドらしさを映像化している。それと主人公が見る夢を映像化したシーンが多く、その比率を言うことさえネタバレになりそうだが、感覚的には『インセプション』や『ミッション:8ミニッツ』、極端に言えば『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のマルチバースの応用とも言えよう。
前半の中核になるのは「隣りの女」と「池袋百点会」を併せた伊守主導のPR誌作成のエピソードで、後半は竹中直人が演じる尾弥次主導のロードムービーと日中戦争の要素を併せたものになる。エロ・グロ・ナンセンスが流行った頃に頭角を表したつげ義春原作の中でもエロスを強調し、波がある展開を取り入れたことで他のつげ義春原作映画よりもエンタメ色が感じられる。
加えて、今回のプロデューサーは片山慎三監督の『岬の兄妹』を見て監督に抜擢したそうたが、エロスと室内がごちゃっとした感じは片山慎三監督らしさはあるが、『岬の兄妹』や『さがす』と比べるとえげつなさは控え目。終盤キツい現実を挿入してはいるが、着地点はマイルドな仕上がり。
もう少し尺を短くしシャープにした方が良かったかもしれないが、終盤のダラダラとした展開はある種の覚めたくない夢と考えられる。成田凌や森田剛といったメジャー俳優がつげ義春原作漫画の登場人物に寄せた風貌になり頑張っているし、
つげ義春原作作品の世界観はラストまでしっかりと感じられる。
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投稿を表示つげ義春さんの作品はまだ見たことなかったので、見てみたいと思いました。