映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
【あなたにぴったりの駄菓子がありんすよ】
(2024年・日本・104分)
監督:中田秀夫
脚本:吉田玲子
原作:廣嶋玲子の児童小説『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』
原作の児童小説は手に取ったこともなく、アニメは1巻目と2巻目を観ただけ。(1話が9分程度だったのでサクサクと観ることが出来た。)
「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」は、幸運な人だけが辿り着ける店だというのがミステリアスだ。女将の紅子さんが個性的で「~でありんす。」「~でござんす。」と花魁のような言葉遣いなのも好奇心をくすぐられる。
銭天堂に辿り着いた客には、悩みや叶えたい望みがあって、紅子さんがその客に合った駄菓子を選んでくれるのだけれど・・・
アニメでたった20話を観ただけの私だが、銭天堂に辿り着いた子供の客の悩み(あるいは願い)は、子供時代の自分もそうだったなあと懐かしい気持ちになった。大人になってからの悩みだって、種類は違っても誰しもが持っている感情(不安、嫉妬、欲張り、劣等感…)なので理解は出来た。幸せになったり理想の自分になれる近道があるのなら、ふしぎな駄菓子に運を掛けてみたくなるかも。
アニメ版では一つ一つが独立した物語だったけれど、本作では小学校教師の等々力小太郎(大橋和也/オリジナルキャラクター)を中心に据えて、登場人物たちに関係性を持たせている。なので、不思議な力を持った駄菓子や、銭天堂という店の存在が噂程度には知られているという設定だった。
ただ、小学生のエピソードが小さな扱いだったので、子どもの観客にとってはどうだったのだろうと思ってしまう。
とはいえ、虹色の水あめのエピソードはよかった。怒りや嫉妬の気持ちよりも自分自身の心の有り様に思いを馳せるというのは、まどか(平澤宏々路)の元々の性格の善さを表していて、兄の小太郎の子供時代のエピソードと相俟って、兄妹の心の土台の誠実さが感じられてよかった。
さて、実写版で紅子さんに扮するのは天海祐希。どんな紅子さんになるのだろうと楽しみにしていたが、天海さんらしくカッコいい紅子さんだった。
期待以上に存在感を発揮したのは、「たたりめ堂」の店主・よどみを演じた上白石萌音だ。青い髪色のボブで、子どもの様な丈の短い着物姿。よどみが売る駄菓子は無料で提供される。よどみの駄菓子には悪意が宿っていて、食べた者の心の中で悪意が増幅していく。よどみはその悪意を回収するのであるが、それが駄菓子の料金代わりということらしい。
映画(実写)化にあたって、天海祐希の紅子さんや上白石萌音のよどみが話題になっていたけれど、そして、映像化は成功だと思うけれど、ストーリーを楽しむのならばアニメ版の方をお勧めしたい。
私の好きなエピソードは、本作のラスト(エンドロール?もう忘れた…)で少しだけ映っていた「ドクターラムネキット」と、本作では扱われなかった「ホーンテッドアイス」と「ゴブリンチョコエッグ」
銭天堂の駄菓子は誰が食べても効果は同じだと思うけれど、結果は食べた人次第というのがミステリアスなのだ。