呪われた一家の真実
5人兄弟に起きた真実
監督:ショーン・ダーキン
主演:ザック・エフロン
製作:A24
時間:132分
呪われた一家
テキサスで活躍したヒール(悪役ね)フリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)には、男の子が5人。引退後は次男のケビン(ザック・エフロン)を中心に三男デビッド(ハリス・ディキンソン)が父の跡を継ぎ、世界チャンピオン目指してプロレスに励んでいた。やるに決まってるよな?という期待を超えた、絶対的な同調圧力。そこに家族の絆は見えない。離れていても気に掛けている、いつでも助ける姿勢は見せても、距離感は親子でも必要だ。ちなみに、プロレスでのお楽しみもしっかりと描かれている。試合前には相手を挑発しまくる!そして、マイクパフォーマンス。これがまたデビッドが上手かった。
だからと言って、世界チャンピオンに挑戦する順番を、デビッドにした事は最大の間違いだ。ケビンのプライドはズタボロ、デビッドはプレッシャーに押し潰された。あそこでケビンがおかしくならなかったのは、彼女のパムとの出会いが大きい。これが無ければ、間違いなく次の犠牲者はケビンだったに違いない。末っ子のマイク(スタンリー・シモンズ)は音楽に生きていた。しかし、体格にも恵まれデビッド亡き後は、必然的にその位置に収まった。
彼も志半ばで逝った兄デビッドの代わりになれず、その事に苦しみ不幸を引き寄せた。時代にも翻弄されただろう人が1人、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)だ。モスクワ五輪をアメリカがボイコットしたが為に、プロレスの道へ。ここでも、世界チャンピオンになる試合を弟ケリーに取られてしまうケビン。なのに、大きく人生が狂うのはチャンピオンになったはずのケリー。最後には、薬漬けになりそうで怖いと言ったが、では何故薬漬けに至ったのか。重要なのはその理由なのだ。
呪いという言葉に吸い寄せられる
悪い事が重なる事は、どこの家族にも一度や二度ある。最初に長男ジャックJrを亡くしたのは、不幸なアクシデントだったと思う。しかしその後は、思い込む事であらゆる不幸を引き寄せ、自らもその不幸に吸い込まれていった。
私も同級生に似たような三兄弟を知っている。
最初に三男がバイク事故で生死をさまよい、次に長男が妻子がいるのに、女性に付き纏い逮捕され公務員を退職。その後次男が『次は絶対俺の番なんだ』と言い謎の自死。
確かに呪われていた、といえば解決するかもしれないが、フォン・エリック一家については、確実に両親に原因がある。
完全な毒親
母親が言った『兄弟で解決しなさい』私もその言葉を言うけど、兄妹喧嘩した時だけだ。ケビンのSOSに対しての解答としては不正解。信仰心がある事を否定はしないけど、何でも神様のせいにして、親の役目を果たさないのはバチが当たるんじゃない?父親だってそうだ。ケビンに『ケリーはお前を必要としていた』じゃねーよ。ただ隣に座って寄り添うだけも出来ないの?私はケビンが父親に気持ちを吐露しながら、マウントポジションをとった場面からずっと号泣してしまった。
ケリーが1人、カヌーに乗る。その先にはデビッドとマイクの姿が。2人とも笑顔でケリーと抱き合う。黄泉の世界なんだろう、解放された表情に胸が痛む。現実世界では、ケビンが我が子を眺めてとめどない涙を流し『パパにも沢山兄弟が居たのに、今は一人ぼっちになってしまった』と話す様子も、子供達がケビンにかける言葉も全て最高に泣けた。
親の呪いから解き放たれた子供たち。ほんの少しだけ運命がズレていれば、皆がそれぞれに家族を持ち、ケビンのような大家族になれたのに。毒親鬱映画でしたが、超絶大好きな作品でした。
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投稿を表示A24作品がかなり色んな範囲の作品に手をつけ始めていて、この作品も?!と気になっていました。
記事読みましたが、ビジュアルだけでは予想つかない映画ですね!
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