第3回 アカデミー賞・作品賞受賞「西部戦線異状なし」
第2回受賞のミュージカル「ブロードウェイ・メロディ」から一転、戦争の無意味さを説く反戦映画の傑作「西部戦線異状なし」が、第3回 アカデミー賞作品賞を受賞した。
「西部戦線異状なし」(1930年・米国、モノクロ、131分)

監督:ルイス・マイルストン

世界的ベストセラーとなったエーリヒ・マリア・レマルク(1898 ~ 1970)の戦争文学の映画化。
第一次世界大戦の勃発により、志願兵として戦地に赴いたドイツの青年たちを通して、戦争の悲惨さ、非人間性をあばき出している。
第一次世界大戦中のドイツ。とある町の学校で帝国主義の教育を受けた若者たちが、兵士に志願することを決意し、入隊を決意していた。ポール(ルー・エアーズ)、アルバート(ウィリアム・ベイクウェル)、ミュラー(ラッセル・グリーソン)、ケムメリッヒ(ベン・アレクサンダー)、ピーター(オーウェン・デイヴィス・Jr)、ベーム(ウォルター・ロジャース)らである。出征した彼らの上官は、何と町の郵便配達人だったヒンメルストース曹長(ジョン・レイ)であった。今までどおり気軽に話しかけるポールたちに、曹長は厳しく接した。やがてフランス軍との激戦地である西部戦線に出陣したポールたちは、古参兵のカチンスキー(ルイス・ウォルハイム)の指示の下、鉄条網張を行うが、激しい砲弾に見舞われ、ベームが犠牲となって命を落とした。若者たちの英雄主義が砕かれ、戦場の過酷さを思い知らされた瞬間だった。塹壕で待機する時間は恐怖との戦いでもある。やがて精神に異常をきたしたケムメリッヒが発狂して塹壕を飛び出し、脚部を撃たれて重傷を負ってしまう...。

史上最初の反戦映画として、そのテーマがしっかり打ち出されていると思うし、凄惨なシーンから目を背けてはいけないとも思う。
塹壕に身を隠した兵士が、飛んできた蝶に思わず手を差し出すと、銃声の後に、兵士の指先が土の上にある...。
鉄条網に、吹き飛ばされた兵士の片腕が垂れ下がる...。
死にゆくフランス兵の傍らで、ポールは戦争に対する疑惑と深い悔恨に苦悩する...。

監督のルイス・マイルストンは本作を手掛けたとき35歳だった。
アカデミー賞の監督賞は彼が受賞したが、実は第1回のアカデミー賞で、「美人国二人行脚」という作品でコメディー監督賞(第1回のみ設けられていた)を受賞している。
彼が関わった作品は、本作を含めて10本観ているが、何れも秀作、傑作揃いだ。
風刺コメディの「犯罪都市」(31年)、異色サスペンスの「雨」(32年)、人間の心の内面を描いた「廿日鼠と人間」(39年)、戦争映画では「激戦地」(45年)、「地獄の戦場」(50年)、「勝利なき戦い」(59年)、サスペンス・コメディ「オーシャンと11人の仲間」(60年)、海洋スペクタクル「戦艦バウンティ」(62年)、加えて編集を担当した「暗黒街の顔役」(32年)である。
製作は「魔人ドラキュラ」(31年)、「透明人間」(33年)「模倣の人生」(34年)などをプロデュースしたカール・レムリ・ジュニア。
撮影は「マルタの鷹」(41年)、「カサブランカ」(43年)のアーサー・エディソン、及び、「メトロポリス」(27年)、「巨星ジーグフェルド」(36年)のカール・フロイントが担っている。

尚、本作の邦題「西部戦線異状なし」では、身体の状態や安全確認などで使用される ‘異状なし’ が使われている。
‘異常なし’ とは異なる使い方は理解できるが、果たして、異状なかったのかは問うまでもない。
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投稿を表示かずぽん さん
コメントありがとうございます。。
逆にお気遣いさせてしまって、こちらこそ申し訳ありません。
お叱りを覚悟のうえで、これからも「過去のご投稿レビュー」を少しづつ拝読させていただきます。
どうかスルーして下さいませ。(拝)
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投稿を表示洋画さんのご紹介で、アカデミー賞受賞作品を順番に観てきました。次は本作かなあと思っています。
『西部戦線異状なし』のタイトルだけは知っていましたが、一度も観ないで来てしまいました。
>史上最初の反戦映画として、そのテーマがしっかり打ち出されていると思うし、凄惨なシーンから目を背けてはいけないとも思う。
洋画さんの説得力のあるこの文章が胸に響きました。是非、観てみようと思います。
それから、ディスカスの方での私の失礼な申し出の件、心からお詫び申し上げます。洋画さんのお心遣いには感謝しかないのですが、案外、私は打たれ弱いのです。洋画さんの行動が素早すぎて、(早速反映されていましたので)驚きました。私もぶらぶら散歩は好きですので、通りすがりにお庭を覗かせていただくかもしれません。
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投稿を表示昔テレビ放送したときに見た記憶があるのですが、それも危うい記憶です。ちゃんと見るべき映画のひとつとして認識していたのですが、ちゃんと見ていません。
これも、見ます!
(リストばかりが長くなるのですが、必ず見るつもりですふ)