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京介 バッジ画像
2025/11/24 11:23

吸血鬼ノスフェラトゥ

吸血鬼ノスフェラトゥ

 1922年 ドイツ サイレント 日本公開:劇場未公開

スタッフ 監督:F・W・ムルナウ 原作:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』1897年 脚本:

     ヘンリック・ガレーン 製作:エンリコ・ディークマン、アルビン・グラウ 音楽 ハン

     ス・エルトマン 撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー、ギュンター・クランフ

キャスト マックス・シュレック、グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム、グレタ・シュレーダー、ア

     レクサンダー・グラナック、ゲオルク・H・シュネル、ルース・ランドスホーフ、ヨハン・

     ゴットウト、グスタフ・ボーツ ほか

ドイツ、ブレーメンの不動産屋で働くハーカーは、契約書にオルロック伯爵のサインをもらうため、愛する妻ニーナを残し遠路はるばるルーマニアのトランシルヴァニアに住む伯爵の元へと向かう。途中で泊まった宿に置いてあった「吸血鬼」の物語を読んで不安になったりしつつ、でもまあそれはそれとしてオルロック伯爵邸にたどり着くと伯爵に「遅い!」と叱られる。それでも契約書にサインをもらって、その日は夕飯をごちそうになり、伯爵の家に泊まることになる。ところがオルロック伯爵は実は吸血鬼で、ハーカーは怪我した指をなめられるが首は無事で、特に吸血鬼になったりはしない。

その頃、妻のニーナは(たぶんオルロック伯爵の魔力で)夢遊病の症状がでたうえ、吸血鬼の悪夢にうなされて医者にかかっていた。一方、オルロック伯爵は棺に故郷の土を敷き詰めて、棺ごと船に乗り込みドイツへと向かおうとする。それを知ったハーカーは阻止しようとするが失敗。オルロック伯爵は船の乗組員の血を吸って次々と感染させて殺し、最後には船長も殺してドイツに到着する。

本作を製作したプラナフィルムは、1921年にエンリコ・ディークマンとオカルティストのアルビン・グラウによって設立された無声映画時代のドイツの映画スタジオで、オカルトや超常現象をテーマにした映画の製作を目的としていたが、本作の公開直後に倒産したため、本作が唯一の製作作品であった。禿げ上がった頭、鼠のような顔、長く伸びた爪。大半の人はその姿から不吉で悪魔的な印象を受けはするであろうが、これが吸血鬼、しかもブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を改変した物語の主役であるとは思いもよらないかもしれない。この『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)は現代の我々が抱く一般的なドラキュラ像とはあまりに掛け離れたグロテスクな吸血鬼像で知られる、ドイツ表現主義時代の傑作映画である。また、この『吸血鬼ノスフェラトゥ』は実験的な風変わりな演出が多いことでも有名であり、当時としては珍しく馬車の走行シーンをコマ落としで撮影していたり、オルロック伯爵の影が扉に忍び寄る演出等、現代の演出にも数多くの影響を与えたことでも有名である。モノクロである上にサイレントであることから、恐らく古典的な怪奇映画を見慣れた人間でなくては少々取っ付きづらいものがあるやもしれぬが、明確な吸血鬼映画としては世界で最初の映画であり、吸血鬼映画を語る上では決して避けて通れぬ映画である。古典的な価値も含め、一見の価値のある映画と言えよう。

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