映画『カポーティ』~ノンフィクションノヴェル完成の裏に隠された天才作家の苦悩~
概要
映画『ティファニーで朝食を』の原作者として知られる作家トルーマン・カポーティがノンフィクションノヴェルの傑作と評される『冷血』を完成させるまでを描いた実話に基づく衝撃作。
アメリカ・カンザス州で発生した一家惨殺事件に興味を持った作家カポーティが2人の死刑囚に取材を重ねていく姿と苦悩する姿を重苦しく沈んだ映像で描き出す。

あらすじ
1959年11月15日、アメリカ・カンザス州ホルカムで一家4人が殺害される痛ましい事件が発生した。
新聞で事件を知った作家トルーマン・カポーティは興味を持ち、幼なじみの作家ハーパー・リーと共に取材を開始していく。
やがて容疑者としてペリー・スミスとディック・ヒコックの2人が逮捕され、カポーティは容疑者2人に面会を重ねていく。特にカポーティは自身と似た境遇にあるペリーに心惹かれ、執筆の意欲を大きくさせる。
しかし、カポーティは小説完成のためにペリーの死を誰よりも望む一方で、誰よりも生きてくれることを望んだことから苦悩していくこととなる。
見どころ
まるでトルーマン・カポーティ本人が乗り移ったかのようなフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が見どころ。話し方、仕草、どこか屈折した表情の全てがカポーティ本人と思ってしまうほどだ。時に情報源としてペリーを見つめる一方で、似た境遇にあることから誰よりもペリーに生きていて欲しいと強く望む気持ちの両方をフィリップ・シーモア・ホフマンが見事に表現している。
天才作家であるが故に自身の持つ才能に誰よりも苦しめられることを映画は否応なく観る者に突きつけてくるようだ。
豆知識
映画『カポーティ』はアメリカで2005年9月30日に公開され、日本では1年後の2006年9月30日に公開された。ちなみに9月30日は作家トルーマン・カポーティの誕生日である。
トルーマン・カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンは第78回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。しかし、2014年2月2日にアメリカ・ニューヨークにある自宅アパートでヘロインの過剰摂取により46歳で亡くなった。
ホフマンの死去から4日後に開催された第64回ベルリン国際映画祭で映画『カポーティ』が追悼上映された。
キャサリン・キーナー演じる作家ネル・ハーパー・リーは小説『アラバマ物語』の原作者として知られている。また、南北戦争の際に南軍を率いたロバート・エドワード・リー将軍の末裔と言われている。ちなみに『アラバマ物語』はグレゴリー・ペック主演で映画化され、1962年に公開された。
作家トルーマン・カポーティは1984年8月25日、アメリカ・カリフォルニア州にある友人宅で心臓発作により59歳で亡くなった。
映画『カポーティ』はベネット・ミラー監督の最初の長編映画であり、第78回アカデミー賞で監督賞にノミネートされた。
ベネット・ミラー監督の弟の妻はモデルのアン・ミカであり、アン・ミカはミラー監督の義理の妹である。