マイナーだけど...オススメB級映画10選
ひと口に「B級映画」といっても、その判断基準が難しいですね。
しかも、数ある作品の中から10作品を選ぶのも、これまた難しい。
私の独断と偏見から出てきたのが、次の10本です。
*尚、何れも私のDISCAS投稿レビューの文章を基に記しています。
①「シンバッド 七回目の航海」(1958年・アメリカ、88分)


いわゆる「シンドバッド三部作」の記念すべき第一作。
ダイナメーションの第一人者、レイ・ハリーハウゼンが手掛けたトリック撮影が全編に効果的に使われており、最近の「CG」には出せない味わいがあります。特に、シンドバッドが骸骨と剣で戦うシーンは映画史に残る名場面と云われています。
チャンドラ王国との平和条約締結交渉を終えたバグダッドのシンドバッド王子(カーウィン・マシューズ)は、チャンドラ王国王女のパリサ姫(キャスリン・グラント)を連れて、船で帰路についた。途中、シンドバッド一行は食料補給のため、海図にない謎の島・コロッサに寄港する。そこでは黒魔術師ソクラ(トリン・サッチャー)が、巨大な一つ目怪物サイクロプスが保持する財宝の中の ‘魔法のランプ’ を奪おうとしていたのだが...。
まるで「アラビアン・ナイト」を彷彿させるエキゾチックな雰囲気が感じられます。
シンドバッドに扮したカーウィン・マシューズが若く、とてもハンサム。
黒魔術師ソクラを演じたトリン・サッチャーが、実に妖しい雰囲気を漂わせています。
パリサ姫に扮したキャスリン・グラントは、ビング・クロスビーの二番目の妻として知られていますね。
本作の大ヒットにより、続編「シンドバッド黄金の航海」(73年)、「シンドバッド虎の目大冒険」(77年)に続きます。
②「ハリウッド玉手箱」(1944年・アメリカ、124分)


なんと贅沢な映画でしょう。
この映画は、第二次大戦当時にハリウッドにあった軍人向けの酒場「ハリウッド・キャンティーン」を舞台にした、ロマンス風ミュージカル・コメディです。
アルファベティカル・オーダーでクレジットされた名優たち40名による競演の豪華さに加え、トミー・ドーシー楽団の演奏、カーメン・キャヴァレロのピアノ、ゴールデンゲート・カルテットのリズミカルな歌声など、「映画と音楽」をこよなく愛するファンには堪らない作品です。お勧めです。
第二次大戦末期。スリム伍長とノーラン軍曹は、ニューギニアの戦地から3日間の休暇をもらってアメリカに帰国した。スリムはハリウッドにある軍人向け慰問酒場「ハリウッド・キャンティーン」を訪れ、以前から憧れているジョーン・レスリーに会いたいと告白する。すると店に勤めているジョン・ガーフィールドの計らいで、ジョーン・レスリー本人を引き合わせてくれたうえ、挨拶代わりのキスまで。それを聞きつけたノーランも酒場を訪れ、居合わせた女性を口説こうとするが、ジョーン・クロフォードやアイダ・ルピノといった既婚者だった。
一般的なミュージカル映画と異なり、ダンスシーンは少ないですが、ジョーン・レスリーもジェーン・ワイマンも歌って踊ります。何より、トミー・ドーシーのジャズバンド演奏が聞けたのが良かったです。さらにカーメン・キャヴァレロのピアノ演奏、あの指使い(鍵盤使い?)はとにかく凄いです。
ミュージカルとはジャンルを異にしますが、スペインのジプシー・ダンサー、ロザリオ&アントニオというペアが登場し、華麗なタップを組み合わせた激しいリズムのダンスは見応えがありました。
③「獣人」(1938年・フランス、109分)


フランスからはジャン・ルノワール監督の「獣人」、原作はフランスの文豪エミール・ゾラです。
パリのバティニョール機関区の鉄道機関士ジャック・ランチェ(ジャン・ギャバン)は、自分では制御できない突然の暴力衝動という悪い遺伝子を祖父や父から受け継いでいる。ジャックは発作を恐れ、故郷の恋人フロール(ブランシェット・ブリュノワ)との結婚を諦めている。一方、ジャックが勤める鉄道会社の助役ルボー(フェルナン・ルドゥー)は、妻のセブリーヌ(シモーヌ・シモン)と彼女の養父で富豪のグランモラン(ジャック・ベルリオーズ)が愛人関係であることを知った。激怒したルボーは、セブリーヌに逢引を誘う手紙を書かせ、グランモランを列車の個室におびき出して殺害するのだが...。
登場する機関車に魅せられ、レビュー・タイトルを「哀しい機関車の車輪の音」としながらも、次のような感想を書いておりました。
--- 列車は走る。走り続ける。人間の感情など知らぬとばかりに。
牽引する機関車の、左横に取り付けたカメラが、スピード感を煽る。
牽引する機関車の、最前部に取り付けたカメラは、大迫力だ。
そこに音が入る。
ずっと、そのまま観続けていたい映像だ。ずっと。---
セブリーヌを演じたシモーヌ・シモンは、フランス映画全盛の1930年代に、コケティッシュな青春スターとして人気を博した。
まるでシャム猫のようなファニーフェイスが魅力的だ。
本作出演時は27歳、ジャン・ギャバンを狂わせる人妻役で、成熟した女の匂い発散している。
彼女こそ「獣人」ではなかったか...。
哀愁を感じさせるジャン・ギャバンの名演は言うまでもありません。
④「ナニー・マクフィーの魔法のステッキ」
(2005年、イギリス・アメリカ・フランス、98分)


何とも楽しい映画に巡り合えました。 *これはB級とA級の中間かもしれません。
大人も子供も、女性も男性も、老若男女問わず楽しめる映画だと思います。ファンタジーとコメディが融合されたような作風、子供たちの生き生きとした表情に、思わず笑みがこぼれます。
葬儀社に勤めるブラウン氏(コリン・ファース)は妻を亡くし、今は7人の子供達と暮らしている。食事はメイドのエヴァンジェリン(ケリー・マクドナルド)とブラザーウィック(イメルダ・スタウントン)が作っていたが、17人目の乳母(ナニー)は子供達の悪戯ぶりに悲鳴をあげて家を出ていった。ある日、玄関ドアに人影が。見ると中年女性が立っている。団子鼻の左下と顎の右側に大きなイボがあり、上の前歯が1本、上唇から飛び出している。女性はマクフィー(エマ・トンプソン)と名乗り、政府から派遣されてきたと言うのだが...。
魔法のステッキを使う18人目のナニー・マウフィーは、ブラウン氏に ‘子供達には5つの約束を守らせる’ と言います。「素直に寝ること」「素直に起きること」「すぐ服を着ること」「話を聞くこと」「言いつけを守ること」...単純で分かりやすくていいですね。
そして子供達が1つづつ約束を果たしていくごとに、マクフィーのイボが消えていく。
7人の子供たちがみな可愛いです。
アンジェラ・ランズベリーの超老眼ぶり、メイド役のイメルダ・スタウントンの派手な赤毛の髪型とソバカスメイク(元は軍隊にいたという設定も可笑しい)も見ていて楽しかった。
⑤「黄金の七人」(1965年・イタリア、90分)


イタリア映画にこんな面白い傑作があったとは驚きです。
練られた脚本と無駄のない構成に加え、ジャジーなサウンド、まさに極上エンタテインメントです。
ある冬の日、真黄色に塗ったガス工事の車数台と、オレンジ色の服を着た6人の男が、道路に穴をあけ地下に潜っていった。しかし誰も彼らがヨーロッパよりぬきの泥棒とは気づかない。しかも向いのホテルの一室では、リーダーの‘教授’と呼ばれる男アルべール(フィリップ・ルロワ)が、妖しい情婦のジョルジア(ロッサナ・ポデスタ)をを傍わらに無線通話機とレーダーで総指揮をとっている。彼らはジュネーヴのスイス銀行の大金庫に眠っている時価数百億円の金の延べ棒を盗み出そうとしているのだ。大金庫は最新式のもので、電子装置をはじめとしたあらゆる防犯設備を備えている。やがてジョルジアが隠し金庫の取引であると偽って銀行訪れ、金庫室に案内されるのだが...。
冒頭のシーンから、彼らが何をしようとしているのか、観客は概ね検討がつきます。しかもその計画が凄い。様々な ‘仕掛け’ を見ているだけで、もうワクワクします。そして何度もヒヤヒヤします。
なんといっても「セクシー姉御」として君臨した、ロッサナ・ポデスタの艶めかし容姿に目を奪われます。出演時の彼女は30歳くらいですが、伝説の美姫として脚光を浴びたのは、遡ること10年前、55年「トロイのヘレン」でしょうか。
最後は続編がある旨の字幕が紹介され、66年「続・黄金の七人 レインボー作戦」へと続きます。
⑥「ドラキュラ 血の味」(1970年・イギリス、95分)


やっぱり本家クリストファー・リーの「ドラキュラ」は、格調の高さと威厳を感じます。
この映画もとても面白く、ハマープロならではの舞台設定や美術セットも豪華版です。
気難し屋で自分勝手なウィリアム・ハーグット(ジョフリー・キーン)は、妻マーサ(グウェン・ワトフォード)が咎めるのを無視し、娘のアリス(リンダ・ヘイドン)を激しく詰った。アリスの恋人ポール(アンソニー・ヒギンズ)と付き合っているのが気に入らないのだ。一方でウィリアムには別の顔があった。友人たちと共にお忍びで妖艶クラブに出向き、好色に耽っている。それを見た没落貴族の子孫コートレイ卿(ラルフ・ベイツ)は、彼ら3人に取引を申し出た。ドラキュラ伯爵の形見であるマント、認印付リング、血の粉末は高値で貴重な骨董品だが、その3点を買取れば無上の快楽を供与すると言うのだが...。
ドラキュラ伯爵(クリストファー・リー)は、冒頭の森の中のシーンでいきなり出てきます。
画面に大アップになる顔、目が赤く充血しており、目下には血が滴り落ちている。
それで胸に十字架が刺さっていれば、見た人は腰をぬかしますね。 怖い怖い。
⑦「アガサ・クリスティーの 奥さまは名探偵」
(2005年・フランス、108分)


これはライトなミステリー・コメディですが、フランス映画らしい洒落の利いた作品です。
フランス東部サヴォア地方の美しい田園風景や、牧草地帯の景観にも目を奪われます。
元海軍大佐のベリゼール(アンドレ・デュソリエ)は、愛妻のプリュダンス(カトリーヌ・フロ)と優雅な生活を送っている。ある日、ペリゼールの叔母(フランソワーズ・セニエ)が入居している高級老人ホームを訪ねた二人だが、プリュダンスはそこで不思議な老婦人ローズ(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)と知合う。数週間後、叔母が亡くなり、老人ホームで遺品を整理していたプリュダンスは、見覚えのある家が描かれた風景画に目を留める。その絵がローズの所有物だったと知るが、既にローズは老人ホームを退所した後だった。プリュダンスは胸騒ぎを覚え、絵に描かれた家とローズを探すため、過去の記憶を辿りながら、ある村に着いた。そこには様々な怪しい人物が生活していた...。
カトリーヌ・フロのファンですが、彼女が若いです。出演時49歳とは思えない身体(相当、絞ってます)、表情も生き生きとして、常に明るいです。
本作鑑賞の目的の一つに、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド(昔から舌を噛みそうな名前/笑)の確認がありました。彼女の出演作品は5本観ていますが、84年「タイトロープ」以降が未見なのでした。画面に登場したとき、すぐ彼女と判りましたが、役柄ながらちょっと老けた感じでした。
そして、ベリゼールとプリュダンス夫婦の娘を演じたサラ・ビアジーニは、名女優ロミー・シュナイダーの遺児ですね。
⑧「電撃フリント / GO!GO作戦」
(1966年・アメリカ、108分)


当時の「007」ブームにあやかって製作されたスパイ映画ですが、ジェームズ・コバーンの初主演作です。
全体的にコミック・タッチで描かれており、アクションと軽いコメディ要素の配合が絶妙です。
世界中の気象を自在にコントロールする巨大装置を開発し、世界を脅迫する悪の秘密組織ギャラクシー。ZOME(国際連帯秘密諜報機構)の本部では、この陰謀組織を倒そうと、米代表クラムデン(リー・J・コッブ)らが作戦会議をしている。その結果、フリーランスの凄腕スパイ、デレク・フリント(ジェームズ・コバーン)に白羽の矢をたてた。当初は依頼を断り続けていたフリントだったが、ギャラクシーが美女の暗殺者ギラ(ギラ・ゴラン)を送り込んでフリント抹殺を仕掛けてきたため、受諾することにするのだが...。
60年代を感じさせるシーンが冒頭から次々と登場、「007」を相当意識していたのでしょうか。
本作のジェームズ・コバーンは、黒のタキシード姿が実によく似合っています。手足が長いからサマになっている。
フリントの旧知の諜報員として、「0008」が登場するのには笑ってしまいました。
続編「電撃フリント/アタック作戦」(67年)へと続きます。
⑨「マー -サイコパスの狂気の地下室- 」
(2019年・アメリカ、99分)


本作は、2011年「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」のテイト・テイラー監督が、同作でアカデミー助演女優賞を受賞したオクタビア・スペンサーを主演に迎えたリベンジ・スリラーです。
エリカ・トンプソン(ジュリエット・ルイス)は夫と離婚し、高校生の娘マギー(ダイアナ・シルヴァース)と共に故郷のオハイオ州へ移り住んだ。エリカはウェイトレスの仕事に就き、マギーは転校初日、電動車いすの電池が切れた女子高生・ジーニー(タニエル・ウェイヴァース)を助けた。更にマギーはアンディ(コーリー・フォーゲルマニス)ら4人の同級生と仲良くなり、5人組として行動を共にする。未成年の彼らは酒が買えず、通りかかったスー・アン(オクタヴィア・スペンサー)という女性に依頼し購入してもらう。それが悲劇の始まりだった.
善人役が多いイメージのオクタヴィア・スペンサーですが、本作の彼女は、陰湿で不気味な怖さが漂っています。
終盤はある事態をきっかけに、自分の感情が制御不能となり、完全に正気を失ってしまうのです。
果たして、そこからの彼女の行動は常軌を逸した別の人間(まるで怪物)のようです。
特典映像におけるオクタヴィア・スペンサーへのインタビューで、彼女が作品と出演への回顧を楽しそうに語っていたのが印象的でした。
⑩「絹の靴下」(1957年・アメリカ、117分)


フレッド・アステアとシド・チャリシー競演のミュージカル映画の傑作です。
2人は53年「バンド・ワゴン」でも競演(あえて共演とは記さず)していますが、この「絹の靴下」はシド・チャリシーの変わり身に驚かされます。
39年「ニノチカ」の舞台版ミュージカルが基盤となっていて、見どころ満載で面白い作品です。
ハリウッドのプロデューサーのカンフィールド(フレッド・アステア)は、パリで映画を製作する為、ロシア人作曲家のボロフと契約、パリにやって来た。ボロフはソ連芸術をPRする演奏会でパリに派遣されていたのだが、一向に帰国しないため、ソ連政府は文化統制委員に命じてブランコフ(ペイター・ローレ)ら3人の共産党員をパリへ派遣した。ボロフに帰国されては困るカンフィールドは、ブランコフらを巧みな口車に乗せ、酒とパリ美人で憔悴させた。それを知ったソ連政府は、厳格で国家に忠実な共産党員のニノチカ・ヨシェンコ(シド・チャリシー)をパリへ派遣させるのだが...。
シド・チャリシーが共産党員ニノチカとして登場するシーンは、本当にシド・チャリシーかと疑うほどの厳格さです。
又、特異俳優ペイター・ローレが出ていますが、彼は様々な国の人物を演じてきた俳優で、31年「M」の連続殺人鬼役は絶品でした。その彼がコメディ調の演技に終始するとはビックリで、ナイフを口に咥えて机と椅子に手を掛け、コサックダンスを踊るシーンは本当に笑いました。
良い意味で、フレッド・アステアの影が薄く感じるほど素晴らしいミュージカルです。
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私の観たことがある作品が一杯。何気にテンションが上がります。
因みに未見の作品は「シンバッド 七回目の航海」「黄金の七人」「電撃フリント / GO!GO作戦」の3作品でした。
「黄金の七人」以外は予約リストの入っていました。
B級映画って未だに基準が分からないのですが、面白ければ何でも結構ってことで、あまり分けて考えた事がありません。