DISCASレビュー

カッツ
2025/10/11 15:18

愛を読む人

この映画は、前半と後半で物語の雰囲気が大きく変化する作品です。前半では、ケイト・ウィンスレット演じる車掌のハンナと、少年マイケルとの出会いから始まります。体調を崩したマイケルを助けたハンナは、彼に物語を読んでほしいと頼みます。実は彼女は文盲であり、それを深く恥じているのです。物語を読む時間が二人の親密な関係へと発展し、年齢差のある恋愛が描かれます。ウィンスレットは、タイタニックとはまったく異なる役柄で、成熟した女性の複雑な内面と肉体を惜しげもなく表現しています。やがてハンナは突然姿を消し、マイケルとの関係は唐突に終わりを迎えます。
時が流れ、マイケルは法律を学ぶ学生となり、ナチスの戦争犯罪人を裁く法廷を傍聴する中で、被告席にハンナの姿を見つけます。彼女は文盲であることを隠し続けたため、裁判は彼女に不利に進みます。文盲であることを認めれば状況は変わるのに、彼女は頑なにそれを拒みます。
初めて観たときは、前半の二人の関係にばかり目が行ってしまいましたが、何度か見直すうちに、後半に描かれるハンナの内面の変化や贖罪の意志が深く伝わってきました。彼女は確かに改心したのだと思います。静かで重厚な余韻が残る、心に深く響く作品です。
 

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