DISCASレビュー

カッツ
2025/12/12 08:21

ルナ

本作は、父を失った少年とその母の旅路を通して、親子の交流と葛藤を描いたヒューマンドラマである。主人公はオペラ歌手の母と共に豊かな生活を送るが、父の死をきっかけに薬物へと手を染め、次第に破滅的な道へと傾いていく。母はそんな息子を救おうと奔走し、物語は親子の複雑な絆を浮き彫りにしていく。

作品の中では、母と息子の関係が時に境界を越えたように描かれ、間接的な性的接触を示唆する場面もある。その奇妙さは観る者に強い印象を残し、親子の愛情と依存の危うさを象徴しているようだ。映画冒頭の意味深なシーンは、終盤に至ってようやく解釈が可能となり、ラストでは登場人物たちが笑顔を見せることで、物語に独特の余韻を与えている。

主演の少年は美しい容姿を持ちながらも歯並びの悪さが目立ち、そのアンバランスさが逆に生々しいリアリティを感じさせる。母子の肉体的接触が間接的に表現される場面は、観客に不安と違和感を抱かせつつも、ベルトルッチらしい挑発的な演出として記憶に残る。

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