DISCASレビュー

カッツ
2025/11/05 07:45

国際市場で会いましょう

2014年公開の韓国映画『国際市場で会いましょう』は、朝鮮戦争後の混乱期から現代に至るまでの韓国社会の変遷を、一人の男性の人生を通して描いた感動作である。主人公ドクスは、戦争によって家族と引き裂かれ、プサンの国際市場にある叔母の店で働き始める。そこから彼の波乱に満ちた人生が始まる。

韓国がまだ貧しかった時代、ドクスは家族を支えるために西ドイツの炭鉱で働き、ベトナムでは戦地で従事する。時代が流れても、彼は国際市場から離れようとしない。その理由が、物語の終盤で静かに明かされる。

「国際市場で会いましょう」というタイトルは、単なる場所の名前ではなく、家族の再会を願う祈りの言葉であり、失われた絆をつなぐ象徴である。ドクスの人生は、韓国の庶民が歩んできた苦難と希望の歴史そのものであり、彼の姿に多くの韓国人が自らの親や祖父母を重ねたのではないだろうか。

この作品は、韓国を理解するうえで欠かせない一本であり、家族、犠牲、そして記憶の重みを静かに語りかけてくる。涙なしには観られない、心に深く残る映画だった。

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