アラフィフのおじさんをも魅了する!ディズニー映画4選
どうも。じょ〜い小川です。
最近、映画館に行くと「シネマニストにバッタリ会っちゃうかも?」とドギマギする病(やまい)にかかってませんか?
ボクはかかってます。
さて、今回のお題は「ディズニー映画」。
実写映画は古今東西の時代、国のあらゆるタイプの作品を押さえているオールラウンダー、トータルファイタータイプの筆者ではあるが、ことアニメ、それもディズニー映画に関してはそれこそ誰もが知っている作品すら押さえていないことが多々ある。格闘技で言えば柔道家に対する打撃技、キックボクサーに対する投技や寝技、というように苦手なオフェンス/ディフェンスというのはあるもの。つまり、じょ〜い小川にとってディズニー映画というのはそういうスタンスに当たる。そう、まさしくブランキー・ジェット・シティの「ディズニーランドへ」の気分そのもの。
なんでも見て、語れて、書ける筆者もそこが限界か……と思いきや、さに非ず。それなりにはディズニー映画も見るには見ていて、中にはオススメもあったりする。
今回はそんなアラフィフのおじさんをも魅了したディズニー映画を4本セレクトしました。
1.『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014年)
まずは、『シカゴ』や『NINE』を手掛けたロブ・マーシャル監督のミュージカル映画『イントゥ・ザ・ウッズ』。シンデレラや赤ずきん、ラプンツェルなど複数のおとぎ話が合わさったミュージカルの映画化。パッとこうしたディズニーやおとぎ話のイメージを持っていると野郎的にはつい後回しにしがちの作風と見受けられそうだが、いざ見てみると、なんと、見事なおとぎ話版『アベンジャーズ』になっていて、あらゆる方向からディープにファンタジーを考えさせられる、これぞ真のファンタジー映画と言うよう!
中盤まではオリジナルのおとぎ話にあたる子どもが出来ないパン屋の夫婦と魔女の話に「シンデレラ」、「赤ずきん」、「ジャックと豆の木」、「ラプンツェル」といった皆が知ってるディズニーファンタジーやおとぎ話が合わさった「おとぎ群像劇」になっている。各おとぎ話のメインキャラにパン屋の夫婦が絶妙に絡みながらも、それぞれのおとぎ話も進行する展開。プリンス&プリンセス、マジカル、キャッスルのディズニーの世界観をそのままにしつつも、タイトルが『イントゥ・ザ・ウッズ』(「森の中へ」)とあるように作中の7割は森の中でのシーンで、さらには魔女、沼や泥が意識的に多く出てくる。この「森」が醸し出す不気味さがいい。
これは、グリム童話を代表とするおとぎ話の本来持ち合わせている負の要素を抽出し、それを上手く繋ぎ会わせて作っている。各おとぎ話の華やかなシーンをカットし、各メインキャラの逃げる、盗む、殺す、騙す、あざとさなどの負の動作をわざと目立たせている。これらにより、観る側のディズニー作品(とくにアニメ)や童話・おとぎ話のダークな雰囲気・要素がより増幅する。
ギレルモ・デル・トロ監督作品『パンズ・ラビリンス』やアルフォンソ・キュアロン監督作品『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、ティム・バートン監督作品『スリーピー・ホロウ』ほど直接的なダーク・ファンタジーの描写とは違い、ディズニー作品の形・イメージを保ちつつ、観る側の深層心理を揺さぶってダーク・ファンタジーを見せる。つまり、森という舞台や夜というシチュエーション、間に沼や泥、メインキャラらの負の言動など汚い物を見せ、とにかく周辺からダーク・ファンタジーに塗り固める、という非常に高度なテクニックを使っている。
さらに、この作品の真骨頂は中盤以降の展開にあり、ここから従来のおとぎ話的ファンタジーをあらゆる手で破壊していく。詳しくはネタバレになるので伏せるが、各おとぎ話のキャラが物語を越えて『アベンジャーズ』的な流れを見せる。こうした流れはあたかも1991年の湾岸戦争の多国籍軍や9.11(日本なら3.11)、さらにはイラク戦争をも彷彿させる。各キャラのセリフからも死生観念や倫理観などを含んだものが見られ、おとぎ話的なファンタジーのハズが現代社会のニオイを香らせる。後半になればなるほど各キャラの絡み方も複雑になり、『アナ雪』のノリ目当ての女性客や子どもが置いてきぼりになりかねない、大人の深い真のファンタジーである。
『シカゴ』や『NINE』を手掛けたロブ・マーシャルの演出は上記2作品よりもケレン味は少なく、トム・フーパー監督の『レ・ミゼラブル』のような作中の流れでの歌のみで演出している。これによって、歌曲と俳優による歌唱力がダイレクトに浮き出て、「ウエスト・サイド物語」を手掛けたスティーヴン・ソンドハイムによる曲の良さと、メリル・ストリープやエミリー・ブラント、アナ・ケンドリックによる歌の上手さが光り、『シカゴ』や『NINE』に勝るとも劣らないクオリティに仕上がっている。
まずは、舞台やミュージカル映画に思い入れがある人は間違いなく必見! そして、中盤以降の『アベンジャーズ』的な視点はもちろん、現代の社会情勢の暗喩も含んだ骨太なファンタジーとしても楽しめるハズである。
ディズニーとロブ・マーシャルによるディープ・ファンタジー! 何度も観て、ファンタジーを極めよ!!
2.『ダンボ』(2019年)
続いてはティム・バートン監督が手掛けた『ダンボ』。ディズニーの「ダンボ」はもちろん知っているが故、なんとなくファミリー映画なのかなと先入観を持って見てみたが、さに非ず! ディズニーの「ダンボ」を題材にしてもリアリズムかつシニカルなユーモアを入れる辺り「流石、ティム・バートン」と唸らざるを得ないティム・バートン流「ダンボ」だった!
基のディズニーのアニメ「ダンボ」の骨格を最小限残し、周りの肉付きになるサーカスの世界観、ショウビズ、遊園地の世界観をリアルにちょっとダークネスに見せた。それこそティム・バートン監督作品『ビッグ・フィッシュ』でもサーカス小屋のようなシーンはあったがそれは客側の視点でのもので、今回は『グレイテスト・ショーマン』的な虐げられた、というか
世の中のはみ出し者が集まるような移動サーカス団の世界観で「ダンボ」を描いている。
本作の1919年という時代設定もばっちり。インフルエンザ(おそらくスペイン風邪)で母親を亡くすとか、第一次世界大戦の負傷で隻腕になる父親、移動サーカス団を買い取り中央制御搭で機械監視をする遊園地の登場など、このちょうど100年前の世界観がディズニーの「ダンボ」に驚くほどハマる。マイケル・キートン演じる興行師ヴァンデヴァーと機械監視の遊園地もお見事でディズニーランドの揶揄とも受け、終盤の様子はシニカルさの真骨頂!
旅周りのサーカス団という題材がいかにもティム・バートン向き。これまでにも『ビートル・ジュース』、『シザーハンズ』、近作では『ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち』など奇形とか世の中に虐げられた者たちを題材にすることがあったが、『ダンボ』も耳がでかくて笑われる子象と虐げられる者(動物)が対象である。そして、サーカス団員も同様。『グレイテスト・ショーマン』ほどではないがデブな人魚擬きに軟体男、怪力男などちょっと世の中のはみ出し者が集まった感じ。そんな見世物小屋から誰もが楽しめるエンターテインメント/ショー/レジャーの世界に移ろうとする辺りは100年前のアメリカの自然の流れだと思えるし、時代の変わり目をも描いている。偶然ながらヴァンデヴァーがメディチ・ブラザーズ・サーカスを吸収する辺りは今でいうM&Aで現代的だったりする。
『ダンボ』に出て来る遊園地「ドリーム・ランド」は中身は違えど実在した遊園地で、実在した時期は1904~1911年と映画とはずれているが、モデルにしたんだろう。その中身は科学テーマパークにジェットコースター、観覧車、動物園の「ナイトメア・ランド」、特設テントの「コロシアム」と時代設定にこだわっているようないないような、ディズニーランドへの当て付けのようにも見えた。その中央に機械を制御する搭があるけど、それがチャールズ・チャップリンの『モダン・タイムス』ともフリッツ・ラング監督作品『メトロポリス』とも違いながらちょっと思い出したりもした。
キャストに関しては出てきた時はツンデレっぽいエヴァ・グリーンが演じるコレットも1910~20年代のチャップリンの映画に出てくる女優っぽくピッタリで魅力がある。彼女の存在が一服の清涼でどこまでも大人が見て楽しむ仕様になっている。
また、マックス・メディチ役にティム・バートン監督作品の常連俳優ダニー・デヴィート。ティム・バートンの映画にこの人が出てると凄く安心する。どこか俗っぽく、時に嫌な面を見せるが憎めない。そのあとにマイケル・キートン演じるヴァンデヴァーが出て来ると全く敵わないのもバットマンとペンギンの関係がダブって見える。
『アリス・イン・ワンダーランド』が変化球的な描き方だったのに対し、『ダンボ』は比較的直球だが、ティム・バートンらしさ満載、健在を思い知る作品だった。
とにかく、ティム・バートン監督が気になる方は見て損はない!
3.『リメンバー・ミー』(2017年)
実写ばかりではなくアニメ作品も。 『トイ・ストーリー』シリーズや『カーズ』シリーズ、『ウォーリー』、『インサイド・ヘッド』など安定のクオリティのアニメ映画を創り上げるピクサー・アニメーション・スタジオ作品『リメンバー・ミー』。メキシコ風味とメキシカンな音楽が満載のアニメで、ピクサーお得意のひねりと道徳心くすぐりはあるピクサーらしい優等生のアニメ映画である。
死者や死の国が関わるアニメ映画というとティム・バートン監督が手掛けた『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『ティム・バートンのコープスブライド』が思い浮かぶが、これらとの違いは音楽や「死者の国」などメキシコ的な文化をふんだんに取り入れ押し出した所にある。「死者の国」というと『007 スペクター』の冒頭のシーンにもあったが、あれをふんだんに取り入れている。映画の世界観が生の世界も死の世界もメキシコなので、ギターを抱えてミュージシャンになるとは言ってもエディ・ヴァン・ヘイレンやイングヴェイ・マルムスティーンではなく、あくまでもメキシコのフラメンコをベースにしたポップスで、そこを理解して楽しむ映画である。
中盤ぐらいまでの主人公ミゲルと憧れのミュージシャンが家族よりも音楽や自分の成功を取るというやや自己中なキャラクターがピクサーにしてはぎこちなく引っ掛かりがある作品に感じられ、中盤までは「らしくない」と思わざるを得ない。が、その謎やネタバレに当たる部分が豪快に効いた作品で、結果的にいつものピクサーの作品として納得出来る。このぎこちない部分から豪快なネタバレが大人には響き、子供にはいまいちピンと来ない部分かも。
メキシコ風味の音楽の素晴らしさはもちろんだが、邦題にもなっている「リメンバー・ミー」は井筒和幸監督作品『パッチギ!』での「イムジン河」の泣き要素とフォー・シーズンズの「君の瞳に恋してる」の製作秘話、つまりクリント・イーストウッド監督作品『ジャージー・ボーイズ』が重なったようなキラー・チューンであり、やはり作品の要になっていた。父と娘の思い出の曲で、これを繰り返しやられたら涙腺が弛む。
終わってみれば道徳的にもしっくり来る上に「リメンバー・ミー」を中心とした楽曲の良さに酔いしれて映画館を後にできるピクサーらしい優等生のアニメ映画だ。前半の引っかかりがあるので手放しで絶賛はできないが、映画が気になっている方は見て損はない。
4.『インクレディブル・ファミリー』(2018年)
最後もディズニー/ピクサーのアニメからチョイス。前作から14年の時を経た『Mr.インクレディブル』の続編『インクレディブル・ファミリー』。邦題や予告編でやたらファミリー推しをして「ひょっとして、作品が前作よりマイルドになったのか?」と不安があったが、今回もしっかりスーパー・ヒーローのアクション映画に仕上がっていて、
MCUの『アベンジャーズ』シリーズやDCEUの『ジャスティス・リーグ』シリーズの流れを意識した現代的なヒーロー・アクション映画になっている!
スーパー・ヒーロー達の活動が伝わりにくく、街の破壊による被害ばかりが残ることからヒーロー排斥の流れになるくだりは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』でも見られたものに通じる。こうしたやたら規制をする世の中やイラスティガールやバイオレット、新キャラのヴォイドなど女性キャラの活躍が目立つ辺りに女性の社会進出の活性化と被るなど、現代社会への投影が見事である。
加えて、ディヴァー兄妹が能力を持ったヒーローを集め団体戦に持ち込むのも『アベンジャーズ』シリーズや『ジャスティス・リーグ』シリーズ、さらには『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』をも彷彿させる。キャラが多過ぎて全体的にキャラ立ちが弱いが、異次元にワープできるヴォイドなどバトルでも面白い動きを見せてくれる。
家族、それも赤ちゃんや思春期の女子といったデリケートでやり方次第では非男子的な作品になりかねない題材も思いの外クリアしている。赤ちゃんの子守りや慣れない家事に翻弄されるボブやバイオレットとクラスメイトの恋路などをスーパー・ヒーローの足枷として控え目に描く。特に赤ちゃんのジャック=ジャックの意外性で良い意味でファミリー色が薄れ、コメディに転化している。
敵も催眠術を使ったり、二転三転の仕掛けがあったりと捻りを効かせているので、全体的に野郎が見ても十分に楽しめる作りになっている。
それこそMCUやDCEUが好きな人なら絶対必見!
いかがだったでしょうか。普段からディズニー映画をこよなく愛する方たちとはかなり変わった視点・考察・紹介でしたが、ディズニー映画はこうした筆者のような捻くれたアラフィフおじさんをも受け入れる度量がある、そんな懐の深さを感じられたら幸いです。
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投稿を表示「アラフィフのおじさんも魅了する!」のタイトルがインパクトあり、目にとまってしまいました!
ディズニーは全世代を魅了しますよね😊
私もティム・バートン監督好きなので、『ダンボ』好きです!
『インクレディブル・ファミリー』と『リメンバー・ミー』は最高です!!
いつも記事を拝見していて、紹介作品の比較作品がスラスラ出てくるのがすごいなと感じていたので、苦手なオフェンス/ディフェンスジャンルとのこと少し驚きでした😮
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