DISCASレビュー

カッツ
2025/11/22 08:24

望郷

1937年、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督フランス映画、原作はアンリ・ラ・バルトの小説で、主演はジャン・ギャバン。地の果てアルジェリアのカスバを舞台に、流刑の身となった悪名高い泥棒ペペ・ル・モコの、故郷パリへの切ない想いが描かれている。

昭和歌謡『カスバの女』の一節「ここは地の果てアルジェリア、どうせカスバの夜に咲く酒場の女の薄情け…」は、この映画から着想を得たのではないかと思わせるほど、作品の雰囲気と重なる。異国の地に閉じ込められた男の孤独と郷愁が、ジャン・ギャバンの演技によって深く表現されており、モノクロ映像の陰影がその哀愁をさらに際立たせている。

時代を超えて心に残るのは、ペペの自由への渇望と、帰ることのできない故郷への想い。犯罪映画でありながら、詩的で哀しい人間ドラマとしての魅力が詰まった作品だった。

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