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私の好きな映画

モリコーネを聞きに行く~続・夕陽のガンマンをやっと見た~

 かつて昭和の時代はテレビの洋画劇場がほぼ毎日、ゴールデンタイムに放送されていました。ビデオのない時代、映画は映画館かテレビで見るしかありませんでした。その洋画劇場では西部劇がよく放送されていて、マカロニ・ウエスタンもそこで見れました。アメリカ製ウエスタンは勧善懲悪で、正義のヒーローが悪漢を倒すのが基本ストーリー。それに対してイタリア製のマカロニウエスタンは主人公が必ずしも正義ではないアウトローで、アンチヒーローで悪党と戦うのは同じです。

 そのマカロニ・ウエスタンはセルジオ・レオーネ監督によるドル箱三部作(「荒野の用心棒」、「夕陽のガンマン」、「続・夕陽のガンマン」)が世界的にヒットしたことで、このジャンルが確立されました。アメリカではマカロニではなく、スパゲティ・ウエスタンと言うらしいです。この作品の配給会社宣伝マンだった淀川長治氏が「スパゲティでは語呂が悪い、マカロニにしよう~」ってことで、日本ではマカロニ・ウエスタンと呼ばれることになりました。因みに日活でつくられた小林旭の「渡り鳥」シリーズは「シェーン」を意識してつくられた和製ウエスタン(国内では無国籍映画とも言われる)をざるそばウエスタンというらしいです。

 

 この「ドル箱3部作」の上映があると、思わずシネコンへ行きました。映画を見るだけでなくモリコーネの音楽を聞きにいきました。本国では映画を見るのではなく、モリコーネの音楽を聞きに劇場をへ行くという話を聞きます。

 マカロニウエスタンはこの三作ですべて語りきれると思っています。こどもの時テレビの洋画劇場で、この三部作は放映済みで見ているのですが、如何せんこどもだたのではっきり記憶がありません。20年くらい前にCSで「夕陽のガンマン」を見て慄きました。なんて面白い映画だと。これは学生時代に深夜のテレビで見た「狼と人間と豚」以来の衝撃でした。この時は邦画にこんなに面白い映画があったのかと。そしてこの「夕陽のガンマン」で、マカロニウエスタンというよりセルジオ・レオーネはかくも面白い映画監督だとを認識したのでした。

 賞金稼ぎのアウトローたちが町にやってきて、お互いが敵か味方かわからない。お尋ね者のこの適役は自分の欲望を満たすにあたって、容赦なく仲間を殺していきます。またそのなかで裏切り者が出てくるなど、アメリカ製西部劇にはない、正義と悪とかを排除したギラギラした人間の欲望丸出しで展開していきます。これは東映の任侠路線から実録路線に転向していったのとよくにたメインストリームの変化を感じます。

 極端なクローズアップやしつこいほどの登場人物のショットの繰り返しによるぎらついた映像を、モリコーネが支えるというか、さらにギラつかせていきます。これもアメリカン・ウエスタンの勇壮な音楽ではとても表現できないギトギト感が作品を盛り立てていきます。ここにセルジオ・レオーネとエンニオ・モリコーネが必要十分な関係を見せてくれます。

 そして、タイトル上は続編をうたっている「続・夕陽のガンマン」のDVDを買いました。なんと上映時間が3時間!これに躊躇し、見ることなく月日がたちました。やがてエンニオ・モリコーネも亡くなりました。

 そして今年、このドル箱三部作が公開されたのを知り劇場へ向かいました。劇場ではパンフレット代わりに「モリコーネとドル3部作の最新研究!」という本が販売されてたようで、足を運んだときには完売、入荷不明でした。これはモリコーネファンがかなり動いた推察します。

 ストーリーは南北戦争下、賞金稼ぎのC・イーストウッドとお尋ね者のE・ウォラックがいかさまを仕組んでは得た賞金を山分けにしていきます。木に吊るした首輪にE・ウオラックが吊るされ、処刑されるかけるや否や、イーストウッドがライフルで首輪を撃ち、ウオラックは逃げうせます。この首輪とライフルがラストの落ちになります。この二人が裏切り合いながらストーリーは進み、もうひとりの主人公、L・バン・クリフが登場します。L・バン・クリフもこの金のありかを探っていて、容赦なく殺していきます。前作ではイーストウッドの敵か味方か謎の人物で結局は味方でしたが、本作ではワルそのものです。この三人のワルどもは瀕死の南軍兵士が隠した20 万ドルをめぐって展開していきます。イーストウッドらがそのありかを訊き出すものの、その前にはだかるのは、L・バン・クリフ、彼は北軍の収容所長だったのです。ふたりは北軍の捕虜にされ、カネのありかを追及されます。ここまでが2時間少々、まだこれから1時間続きます。かのように欲望まみれの男たちの模様をレオーネのしつこいクローズアップにギラギラついた映像にモリコーネの音楽が盛にもっていきます。このディープさはアメリカ人にない泥臭ささです。

 この三人の虚々実々の駆け引き、ここまでくるとどっぷりと嵌まるしかありません。ここはスクリーンでこそ作品を満喫できることを認識します。レオーネの映像にモリコーネの曲がここまで練りこまれ、こびりついているのは、撮影中にモリコーネの曲を流して演出していたことを知りました。

 そしてクライマックスの3人の死闘、これまたモリコーネが引っ張る引っ張る、果たして誰が生き残るか、見事な描写が見られます。余談ですが、「黄金の犬」という日本映画のラストはここをパクったような気がしています。

 原題は“いい奴、悪い奴、汚い奴” となっているますが、全員ふざけた奴です。「荒野の用心棒」で盗作騒ぎの汚名をきたレオーネですが、前作の「夕陽のガンマン」と本作で実力がホンモノであることを見せてくれました。それでレオーネ作品を見ようとしたのですが、寡作でこのあとは「ウエスタン」、「夕陽のギャングたち」しかありません(「ワンスアポンアタイムインアメリカ」を除く)。

 スクリーンいっぱいを使って魅せてくれる監督でした。それを支えてたエンニオ・モリコーネ。いい作品にはいい音楽がついてます。モリコーネに「2001年宇宙の旅」のオファーがあったらしいのですが、これをレオーネは握り潰したそうです。これは愛なのでしょうか?

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2 件の返信 (新着順)
Stella
2024/10/14 19:55

モリコーネの作品は、ぐっと入ってくるものがありますね。

椿五十郎 バッジ画像
2024/10/13 17:17

カリントさん!やっとこさ登場ですね!
カリントさんのサントラ熱のすごさを十二分に発揮してくださいませ!
モリコーネを語るのに、レオーネのマカロニウェスタンから入るとは、さすがカリントさん!やはりモリコーネの魅力横溢はこれらの作品ですね!カリントさん口癖の「モリコーネは〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇といってるのは云々・・・」の回答ですね(爆)
これからも熱いサントラ記事期待しますが、まずは、シネマニストで自己紹介してくださいね~(笑)