映画『春画先生』春画の世界に魅せられた者たちによる偏愛コメディ!
平安時代からはじまり、江戸時代に全盛期を迎えた“人間の性的な交わり”を描いた春画。これまでその取扱いは日本映画でもタブーとされてきましたが、今回映倫審査で区分【R15+】として指定を受け、商業映画として全国公開される作品では日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写を実現させた映画『春画先生』がいよいよ10月13日(金)に公開となります。
そこで今回、完成披露上映会にてひと足早く本作を鑑賞した筆者がネタバレなしでその見どころをお届けします。
映画『春画先生』あらすじ
”春画先生”と呼ばれる変わり者の研究者・芳賀一郎(内野聖陽)は、妻に先立たれ世捨て人のように一人研究に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子(北香那)は芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村(柄本佑)や、芳賀の亡き妻の姉・一葉(安達祐実)の登場で大きな波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった ー。(「春画先生」公式サイトより抜粋)
江戸時代に庶民から大名までを虜にした『春画』とは?
皆さんは「春画」という言葉を聞いたことがありますか?「春画」とはズバリ、“人間の性的な交わり”を描いた浮世絵のこと。そう聞くと、現代のポルノのような【秘すべきもの】をイメージする方も多いと思いますが、実際には江戸時代に春画は「笑い絵」とも呼ばれ、男性だけでなく多くの老若男女が気軽に楽しむ身近な娯楽として大衆に受け入れられてきた、真のエンターテインメントだったそうです。
本作では、そんな春画を巡り、好きなものや人に一直線にのめり込む者たちの愛や性を『偏愛コメディ』としてコミカルに描いているところが大きな魅力だと言えます。
人生を変える『推し事』
平凡で退屈な日々を過ごしていた主人公の弓子。「春画先生」と呼ばれる春画を愛する変わり者の研究者・芳賀との出会いにより、その人生が一変します。
最近よく耳にする【推し活】。コラムを読んでくださっている方の中にも推し活経験があったり、何かに夢中になり寝食を忘れてのめり込んだ経験のある方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?推しの全てを知りたい。推しについて熱く語り合い、その魅力を共有したい。いやいや、私は1人でひっそり推したい···人によりその推し方は様々ですが、本作の主人公・弓子は春画の魅力、そしてそれを教えてくれる“春画先生”芳賀に恋心を抱き、究極の推しである芳賀に向かって猪突猛進、自分の欲望に真っ直ぐに突き進んでいきます。その姿は時に滑稽で可笑しく情けない。だけど、とてつもなく生命力に溢れ自由で美しい。こんな風に自分のリミッターを外して突っ走ってみたい!自分を解放して自由になりたい!弓子を見ているとそんな風にも思えてくるのです。
『偏愛』と『人間賛歌』
『偏愛』とは文字通り、ある特定の人や物だけを偏って愛するということ。この物語に出てくる人々は皆どこか不器用でいびつで歪んでいて、愛するものや人に対するその欲望は恥ずかしくなるほど滑稽。だけど、そんな彼らの姿はどこか清々しく、そうそう、人間ってそういうものだよね!と思わず笑いが込み上げてきます。
欲望に真っ直ぐな彼らの姿は、生きるって本来こういうことなのではないかと思えるほどエネルギーに満ちていて愛おしい。誰かを、そして何かをひたむきに愛することは綺麗なだけでなく、下心や欲求、嫉妬など歪んだ感情も伴うもの。だけど、それら全部をひっくるめて真っ直ぐに突き進む、それこそが生きるということではないでしょうか。登場人物の様々な愛と性の形を見ていると、これこそが人間だと、人間って可笑しくて滑稽だけど素晴らしいとも思えてきます。この作品は、まさに「人間賛歌」の物語と言えるのではないか···筆者はそんな風にも感じました。
「春画」の魅力と奥深さ
冒頭でも触れましたが、これまで春画の取り扱いは日本映画でもタブーとされ、性器部分にはぼかしが必要でした。しかし今回、映倫審査で区分【R15+】として指定を受け、商業映画として全国公開される作品では日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写を実現させた本作。筆者自身春画をここまでしっかり見るのは初めてだったので、スクリーンに映し出される浮世絵春画に思わずドギマギ。
ただ、劇中語られる春画の魅力や奥深さを知り、その見方も少しずつ変わっていったように思います。無修正という部分がクローズアップされがちですが、春画の魅力はそこだけにある訳ではない。むしろそれ以外のところにあるといっても過言ではないような気がします。言葉では伝えきれない春画の魅力や奥深さを、是非その目で確かめてみてください。
生命力溢れる俳優陣のお芝居
今回は完成披露上映会ということで、キャスト・監督が揃って登壇!作品にまつわる貴重なお話をたくさん伺うことができました。中でもキャストの皆さんが声を揃えておっしゃっていたのが、主人公を演じた北香那さんのお芝居の熱量とその素晴らしさ。愛や嫉妬、下心、欲求に真っ直ぐに、自らの中にある欲望をたぎらせ解放させていくその姿は生命力に溢れ、観る者を魅了します。北香那さん自身、脚本を読み絶対にこの役を演じたい!という強い想いで役に臨んだとお話されていました。
さらに春画先生こと内野聖陽さん(変人学者っぷりが最高)、その元妻の姉を演じた安達祐実さん(アレを持たせたらピカイチ)、編集者役の柄本佑さん(とにもかくにも青ブリーフ)、全てのキャストがまさにこの人以外考えられない!という程のハマり役。塩田明彦監督の筋書き通りでは終わらない脚本も素晴らしく、まさにクセになる偏愛エンターテインメントと言える作品ではないかと思います。
常識やモラルを軽々と飛び越え、好きに向かって一直線。推し事は人生を変える!この作品を観ればきっとあなたも胸が熱くなり夢中になれる何かを見つけたくなるはず。登場人物たちが見せる愛と性の物語にドキドキしつつもどこか笑える偏愛コメディ。偏愛のその先に見える世界とは···?
映画『春画先生』は10月13日(金)より全国ロードショーです。
是非劇場でお楽しみください!
最後までお読みいただきありがとうございました。これからも様々な新作映画やオススメ映画の見どころをお届けしていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
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お客さんの年齢層高めで男女半々でした。
北香那さんはドラマのバイプレイヤーズにてマネジャー役をして可愛い女優さんのイメージでしたが、今作では弓子役を魂から演じる姿に「この作品でブレイク」と謎のプロデューサー目線(笑)になりました。
その他の俳優さんもイキイキと演じた姿がとても印象的でした。
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投稿を表示今日観てきたよん。
推しが居るからか、素直に共感しか無かったよ笑
キャストも皆ハマり役でね!毒毒しくなりそうな所を品よくまとめてる好きな作品だったわ♡
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投稿を表示たかえさん✨今回もコラム読ませていただきました!この作品、たかえさんが試写で観たのをストーリーにあげてくれていた時にどんなのだろうと検索したのですが、あーこれはたぶん私の苦手なジャンルで観れない作品だなぁって思いました…。なぜなら性的な描写が苦手で凝視出来ないからです。でもこのコラム読んでみるとちょっと興味が出てきて観たいかも!と思うようになりました。今回もめちゃくちゃわかりやすくて丁寧に書いてくれていて、作品の内容が把握出来たので感謝です!いつも素敵なコラムありがとうございます☺️✨
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