私の好きな映画

cine-ma
2025/08/07 09:57

2025年に観た映画(36) 「中山教頭の人生テスト」

教頭先生の名前、小中高と一人も思い出せません。試しに高校の卒アルを引っ張り出してみたところ、名前も顔も記憶にないオジサンが校長先生の隣に座っていました。

TVドラマの中では大抵校長の腰巾着で、保護者の矢面に立たされ、いろんな方面からやり込められる冴えない中間管理職として描かれる教頭先生。
本作の主人公である中山教頭も、のっけからいい年して教頭どまりの雑用係、年功序列のおかげでここまできました的なオーラを発散している。
このどこか頼りなさげな「なんでも屋」の教頭に降りかかる新たな難題。はたして中山教頭は無事に務めを果たせるのか?そして彼は校長試験に挑めるのか?

佐向大監督は、学校というコミュニティの内外で起きる様々な問題に翻弄される中山教頭の奮闘振りをユーモラスに描きつつ、その背景にある深刻な問題にもしっかりとロックオンしている。
子供達にしかわからないクラスという社会の縮図の中の人間関係が生み出す、イジメに不登校に各種のハラスメント。そんな問題に校長、教頭、元担任に現担任に担任代理、そして教育委員長と、教育関係者が意見を異にしながら口を挟むも、決して誰かに正義を預けることもなければ肩入れもしない。
監督は職場(学校)の問題と家庭の問題とを同時進行させながら上手に交通整理しつつ、次々訪れる問題の解決を愚直に教頭達の手に委ね、安直な決着をよしとしない。そして物語には様々な仕掛けが施されていて、観客は物事を安易に決めつける怖さを知る事となる。

名バイプレーヤー渋川清彦がこの役回りを好演(この人、そろそろ本格的にブレークしてもいい頃じゃなかろうか)。高野志穂さん、渡部秀さん、風間さんに石田さんと、全体的にキャスティングの妙が光る。子供達もとても素敵です。

農業、医療と並んで伏魔殿的問題を抱えていそうな教育の現場を舞台に、その表層しか見ずに決めつけたり糾弾するといった昨今のSNSで起こりがちな問題についても、監督は優しく諫めているかのようでもありました。
パッとしない教頭だと思っていたら、意外な信念と子供達への包容力を発揮もしてくる。これもまた、何事も見た目で判断しちゃいかんという監督からのメッセージなのではとは考え過ぎか。
佐向監督作品初体験でしたが、次回作も楽しみになりました。

№36
日付:2025/8/2
タイトル:中山教頭の人生テスト
監督・脚本:佐向大
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン3
パンフレット:あり(¥880)
評価:6

パンフレット(¥880)
  • かいせつ
  • あらすじ
  • 渋川清彦さんインタビュー
  • キャストしょうかい
  • 佐向大監督インタビュー
  • スタッフしょうかい
  • 撮影日誌
  • 作品評1 ポンコツ教頭の「ロック」と、ゆるキャラのリーダー論 森直人(映画評論家)
  • 作品評2 蛇口を絞める「脇役」が存在していれば、世界はかろうじて大丈夫 恩田泰子(読売新聞編集委員)
  • クレジット

 

 

 

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