映画『ロード・トゥ・パーディション』~父と息子の絆が静かな感動を呼ぶアクション叙事詩~
●概要
作家マックス・アラン・コリンズの映画と同名のグラフィックノヴェルを映画『007/スカイフォール』、『アメリカン・ビューティー』、『ジャーヘッド』、『1917命をかけた伝令』などで知られるサム・メンデス監督が映画化した感動のアクション叙事詩。妻と次男を殺されたアイルランド系ギャングの殺し屋と生き残った長男が悲劇的な状況の中で心を通わせる姿が哀愁漂う音楽と映像を交えながら描かれていく。主演は名優トム・ハンクス、共演は「ハリウッドの伝説」と呼ばれるポール・ニューマン、『ミュンヘン』で知られるダニエル・クレイグ、『リプリー』、『コールド マウンテン』で知られるジュード・ロウ。

●アカデミー賞ノミネート
作曲賞・録音賞・音響編集賞・撮影賞・助演男優賞(ポール・ニューマン)
●受賞歴
第75回アカデミー賞撮影賞受賞
●About the Movie
1931年、アメリカ・イリノイ州ロックアイランド。
アイルランド系ギャングの殺し屋マイク・サリヴァンは愛する妻アニー、長男マイケル、次男ピーターと共に慎ましくも幸せな生活を送っていた。
街を執り仕切るギャングのボスで父親代わりでもあるジョン・ルーニーに愛されるマイクだが、そんな彼のことをジョンの実の息子コナー・ルーニーは嫉妬に満ちた目で見ていた。
そんなある日、長男マイケルは雨の日に出掛けた父親が運転し、コナーも一緒に乗っている車の後部座席に隠れていた。やがて到着した倉庫で自分の父親とコナーが男たちを銃で撃ち殺す場面を見てしまう。倉庫で起きた出来事をマイケルが話すことを恐れたコナーはマイクへの憎悪と嫉妬の思いからアニーとピーターの命を奪うが、それを知ったジョンにコナーは激しく責められる。
実の息子コナーと息子のように愛するマイクとの間で板挟みになったジョンであったが、彼は血のつながりを選んだ。そして、ジョンは一流の殺し屋ハーレン・マグワイアにサリヴァン父子殺害を依頼する。
復讐の旅に長男マイケルと共に出ることを決めたマイクであったが、ジョンが送り込んできた殺し屋マグワイアが迫ってきていた。
●映画評
哀愁漂う音楽と映像が見事に融合した感動のアクション叙事詩である。映画『フィラデルフィア』ではエイズに感染した弁護士役、『フォレスト・ガンプ/一期一会』では知能指数は低いが純粋な心を持つ青年を演じ、『プライベート・ライアン』では行方不明となった二等兵救出に向かう兵士を演じてきたトム・ハンクスが悪役、しかも殺し屋という役を演じている珍しい作品でもある。確かにギャングが登場するので血生臭いシーンや銃撃シーンもあるが、この映画は父親と息子が悲劇的な状況の中で少しずつ心を通わせていく姿が描かれている。子ども心に思うのは、自分の父親が一体どのような仕事をしているのかということだ。トム・ハンクス演じるサリヴァンの長男マイケルは自分の父親が戦争の英雄であり、ジョン・ルーニーのために働いていることを知っている。仕事は危険なので銃を持っていくことも知っている。映画では12歳の少年マイケルが父親が人を銃で撃ち殺す場面を目撃してしまうことから悲劇が起き、そのような状況の中で復讐の旅に出る姿が描き出されていく。
子どもながらの好奇心が直接ではないが悲劇を招いたことでマイケルは自身を責めるが父親は否定するシーンがあり、子を思う親の気持ちが想像できる。
ギャングのボス役を演じたポール・ニューマンの演技が良い。出演当時77歳だったというニューマンだが、年齢を重ねても透き通った目の輝きは健在だ。その輝きの中に冷酷さを感じさせる演技は見事だ。また、ギャングの息子役を演じたダニエル・クレイグの演技も素晴らしい。影があり、冷酷さと怒りを秘めた演技は舞台で培ってきた卓越した演技力があるからこそだ。
トム・ハンクスも演技も良い。かつて父親のように愛していたジョン・ルーニーと雨の中で向き合うシーンは何度観ても涙があふれる。そして、ニューマンとピアノを連弾するシーンも胸に静かな感動が込み上げてくる。
寒々とした映像がやがて緑豊かな春の暖かい映像へと変化していくが、その変化が父親と息子が心を通わせる姿と見事に重なり合っている。

●トリビア
トム・ハンクスは映画『フィラデルフィア』と『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー主演男優賞を受賞した。
ポール・ニューマンは映画『ハスラー2』でアカデミー主演男優賞を受賞した。
サム・メンデスは映画『アメリカン・ビューティー』でアカデミー監督賞を受賞した。
サム・メンデスの元妻は映画『愛を読むひと』でアカデミー主演女優賞を受賞したケイト・ウィンスレットである。2003年にメンデスとウィンスレットは結婚したが、2010年に離婚した。
ちなみに、メンデスは映画『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』でレオナルド・ディカプリオと元妻ケイト・ウィンスレットを共演させた。
ポール・ニューマンとトム・ハンクスがピアノを連弾するシーンがあるが、当初はダンスシーンであった。実はポール・ニューマンはダンスは苦手だが、ピアノを弾けるのでシーンが変更された。ちなみにトム・ハンクスはピアノを弾けるように猛特訓した。
映画『ロード・トゥ・パーディション』は時代劇漫画『子連れ狼』を題材にしている。
主人公マイケル・サリヴァンは農場で育ったが、実はまた銃を手にして人の命を奪った。定かではないが、神父になったという。
映画『ロード・トゥ・パーディション』は日本での試写会の際に『狼は天使の匂い』というタイトルが付けられていた。
●映画『ロード・トゥ・パーディション』日本版劇場公開予告編