カッツ
2025/10/29 07:34
世界で一番美しい夜
巨匠今村昌平監督の息子・天願大介による監督作品である。
物語の舞台は、さびれた漁師町。そこに左遷されてきた新聞記者の主人公が、やる気のない支社長たちと共に、事件らしい事件も起きない日々を過ごす。だが、その気だるくも穏やかな空気感が、むしろ心地よい。
町にはスナック「天女」に集う、さまざまな事情を抱えた人々が登場する。やがてこの町は“日本一出生率が高い街”として注目されるが、その理由とは何か?。そして、タイトルにもなっている「一番美しい夜」とは何を意味するのか?。
ストーリーはかなり荒唐無稽で、展開に無理を感じる部分もあるが、天願監督の手腕によって不自然さはなく、むしろ幻想的な世界として成立している。3時間近い長編ながらも、飽きることなく最後まで楽しめた。所々で絵が混じるが、この絵がなかなかよい。
こんな町が本当にあるなら、私も住んでみたい——そう思わせる、不思議な魅力に満ちた作品だった。
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