(若干ネタバレあり)抑圧された女たちよ、世界に中指をつき立てて抗え! =エリザベート1878=
何でしょう。この映画は!
今でもオーストリアの人々にはシシィの愛称で愛されているエリザベート皇妃の40歳になった年、1878年の1年を切り取って描くストーリー。
もちろんこれは史実とは違います。でも、もしかしたら彼女はこんな風に自由になりたいと思っていたのではないでしょうか?
このジャケットは、エリザベートが【抑圧された女たちよ、世界に中指をつき立てて抗え!】と言っているように感じました。
🎦エリザベート1878🎦
(Corsage)
2022年 オーストリア/ルクセンブルク/ドイツ/フランス
監督:マリー・クロイツァー
出演:ヴィッキー・クリープス 、 フローリアン・タイヒトマイスター 、 カタリーナ・ローレンツ 、 マヌエル・ルバイ 、 フィネガン・オールドフィールド 、 コリン・モーガン
あらすじ(DISCASより)
ヴィッキー・クリープス主演、ハプスブルク家最後の皇妃・エリザベートを描いたドラマ。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えたエリザベートは、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務に窮屈さを覚えていく。
飾り物としての皇妃の存在
16歳で結婚してオーストリア皇后になったエリザベートは、1877年のクリスマスイブに40歳の誕生日を迎えたました。ヨーロッパ宮廷一の美貌とうたわれた彼女は、過酷なダイエットのお蔭で、コルセットで締め付けられたウェストは50㎝!(身長175センチ、体重が45-50KGだったそうです)これを維持していくための努力を惜しまず重ねてきたものの、40歳になった今は、夫である皇帝ヨーゼフ一世は彼女を単なるお飾りとしか考えていません。国民の前では仲睦まじい風を装いますが、その実夫婦の間には隙間風が吹いている状態。まあ、中年の夫婦にはよくあることではありますが(;^_^A
コルセットで締め付けられたウエストと同じように窮屈な生活
原題は「コルセット」。まさにこのコルセットが細いウェストを更に細く見せて美しさを強調出来るアイテムになっていた時代ですが、締め付けられたウェストと同じように、エリザベートの愛のない生活は窮屈で退屈なものだったのです。
女として見てはくれない夫への反発から、姉の屋敷へと旅に出たエリザベートは、馬の調教師に惹かれるようになるが、息子のルドルフ皇太子にそれを咎められ、そそくさと宮殿に戻ってきます。今度は、姉弟のように親しかった従兄のルートヴィヒ2世に、愛を迫ったりもしますが、彼にはある理由から受け入れてもらえず、心も体も持て余し、ますます孤立して孤独になっていくエリザベートです。
窮屈といいながらも自由奔放な女性
晩餐の席では反抗的に紙タバコを吸ったり、政治の話に口を挟んだりして、ヨーゼフ一世に露骨に嫌な顔をされます。眠れないからと言って、幼い娘を夜中に起こして無理に乗馬に誘い出し風邪をひかせてしまうことも。「君はまた子供を死なせる気か?!」と皇帝はどなりつけます。そう、彼女は最初の子供を幼くして亡くしているのです。そのときもエリザベートが無理に旅に連れていったことが原因だった風なことを皇帝が言います。
また、侍女のマリーが求婚されたので、結婚させて欲しいと懇願したときも、即座に許しません、と撥ねつけまます。
なんじゃ、単なる我儘女じゃないか!と思われても仕方のない行動の数々には、観ていて次第に共感出来なくなる自分がいました。
この時代の女性の平均寿命は40歳!
平均寿命は生きれたのだから、もういいじゃないですか、みたいな医者の言葉に愕然としました。この時代の女性は40歳まで生きれれば御の字だったのです。それでこんなにも老いることに恐怖心と拘りがあったわけですか。。。
自由へのダイブ
食事はオレンジのスライス、腰の下まで伸びた長い髪、コルセットで締め付けたウェスト。ある日彼女はこのすべてを捨てる決断をするのです。
食事は食べたいものを食べて、髪の毛は自分で短くカット、マリーにコルセットをつけて影武者として公の場に出させます。そして髪を短くしたら、夫が積極的に欲情してくるという皮肉なシーンも。
そして衝撃的なラスト。これは彼女が本当の自由を手に入れたのだと解釈すればいいのか?ラストシーンは戸惑いましたが、何か解放された気持ちが沸き上がってきて、やったぜ!みたいな気持ちになったのは不思議な感覚でした。
史実では60歳まで生きたエリザベート皇妃です。1879年に息子のルドルフ皇太子が自殺するという悲劇もあり、その後は喪服を脱ぐことはなかったそうです。