DISCASレビュー

カッツ
2025/12/29 08:27

サブスタンス

2024年

デミ・ムーア主演のSFホラースリラー『サブスタンス』は、老いによってキャリアを脅かされる女優が、若さを取り戻すために“ある物質(substance)”に手を出してしまうという、現代的で痛烈なテーマを扱った作品である。

その物質の作用によって、主人公の背中から“若い自分”が生まれ落ちるという衝撃的な設定は、単なるホラー表現ではなく、若さと老いの分裂、自己否定と欲望の具現化として強烈な印象を残す。二人は7日ごとに入れ替わって生活するが、若い側が“もっと長く生きたい”と望むようになった瞬間から、物語は破滅へと転がり始める。

デミ・ムーアは61歳にして身体表現を厭わず、老いゆく身体と向き合う役柄を力強く演じている。若い“もう一人の自分”との対比は、単なる外見の差ではなく、時間の残酷さや自己像の揺らぎを象徴しているように感じられた。

作品としては前半の心理スリラー的な緊張感が魅力だが、終盤はスプラッター要素が強まり、好みが分かれる展開となる。それでも、老いと若さの対立をここまで露骨に、かつ寓話的に描いた作品は珍しく、強い余韻を残す。

女優が老いとどう向き合うかというテーマは、時代を問わず繰り返し描かれてきた。最近テレビで見た吉永小百合の80歳とは思えない若々しさも含め、年齢と表現者の在り方は、これからも語り継がれる題材なのだと改めて感じた。

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