DISCASレビュー

カッツ
2025/10/26 08:24

刺青

谷崎潤一郎の原作をもとに、新藤兼人が脚色し、若尾文子が主演を務めた映画『刺青』は、耽美と背徳が交錯する濃密な世界を描いている。
物語は、質屋の娘が恋人と駆け落ちするも、悪意ある者に騙され、芸者として売られてしまうという悲劇から始まる。若尾文子は、運命に翻弄されながらも、妖艶さと儚さを併せ持つ女性を見事に演じている。
特に印象的なのは、彼女の背中に彫られた大きな蜘蛛の刺青。その姿は、肉体の美しさと運命の重さを象徴するようで、観る者の目を奪う。官能的でありながらも、どこか哀しみを帯びたその描写は、谷崎文学の世界観を映像として見事に昇華させていた。

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