DISCASレビュー

カッツ
2026/01/27 08:20

ティント・ブラス 秘蜜

ティント・ブラス監督の『秘蜜』は、巨匠ルキノ・ヴィスコンティが映画化した『夏の嵐』を、イタリアン・エロスの旗手であるブラスが大胆にリメイクした文芸エロスである。音楽はエンニオ・モリコーネが手がけ、官能と緊張が交錯する独特の空気を生み出している。ティント・ブラス監督はあの「カリギュラ」の監督である。

舞台は第二次世界大戦末期のイタリア。ムッソリーニ政権下にあり、ナチスと協定を結んでいたヴェニスでは、ドイツ軍の支配下で映画制作が続けられていた。物語は、ドイツ軍将校と映画製作者の妻との不倫を軸に展開する。
しかし本作は単なるロマンポルノではなく、戦時下のイタリア社会をしっかりと描き出している点が興味深い。イタリアの一般市民がドイツをどのように見ていたのか、そして彼らが連合国とドイツの双方に「二股」をかけながら生き延びようとしていた姿が浮かび上がる。ドイツ軍将校の不倫すら黙認される空気は、占領下の複雑な力関係と人々のしたたかさを象徴している。

ドイツ軍に支配されたイタリアの姿は、『マレーナ』にも通じるものがあり、ブラス作品でありながら歴史の陰影がしっかりと刻まれている点が印象に残った。この手のロマンポルノは評価が低いのが普通であるが、この映画のエロの部分を除いても十分楽しめる作品だと思った。

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