カッツ
2025/10/31 07:40
生きる
1952年公開、黒澤明監督・志村喬主演による『生きる』は、無為に日々を過ごしていた市役所の課長が、胃癌によって余命幾ばくもないことを知り、己の「生きる」意味を模索する姿を描いた名作である。
主人公は、これまでの惰性的な役所仕事から目を覚まし、市民のために公園を整備するという小さな使命に人生の残り時間を捧げる。その姿は、静かでありながら力強く、観る者に深い問いを投げかけてくる。
今も昔も、役所の仕事には形式的な側面があるが、そんな中でも一人の意志が社会を動かすことがあるという希望が、この作品には込められている。
志村喬が雪の降る夜、一人ブランコに揺られながら「命短し恋せよ乙女」と口ずさむシーンは、孤独と達成感、そして人生の儚さが交錯する名場面であり、忘れがたい印象を残す。
人は何のために生きるのか——その問いに静かに、しかし確かに答えようとするこの作品は、今なお色褪せない力を持っている。
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