DISCASレビュー

カッツ
2025/11/30 07:35

悪魔を見た

2010年公開の韓国映画『悪魔を見た』は、イ・ビョンホン主演による壮絶な復讐劇とサイコスリラーが融合した衝撃作である。冒頭から不穏な空気に満ちており、雪の降る夜、人里離れた細い道で若い女性の車が故障する場面から、観る者は一気に物語へと引き込まれる

通りかかった一台のワンボックスカー。親切心かと思いきや、運転していたのは連続殺人鬼だった。女性は無残にも命を奪われ、その遺体の描写は目を背けたくなるほど凄惨で、観る者に強烈なショックを与える

被害者の婚約者である国家情報院の捜査官(イ・ビョンホン)は、犯人を捕まえるだけでは怒りが収まらず、あえて彼を逃がし、何度も追い詰めては痛めつけるという異常な復讐劇を展開していく。しかし、やがてその復讐は思わぬ方向へと転がり、“悪魔”を見たのは果たして誰だったのか――という問いが観る者に突きつけられる

本作には、暴力や猟奇的な描写、性的なシーンなど、極めて過激な表現が多く含まれており、観るには相応の覚悟と耐性が求められる。しかしその過激さの中に、人間の怒り、哀しみ、そして復讐の虚しさといった深いテーマが込められており、単なるスリラーにとどまらない重厚な作品となっている

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