二度と起こしてはならない。『ユダヤ人迫害』に焦点を当てた作品5選
こんにちは!
そぜシネマです。
『今日何観よう?』のお手伝いができるように
お茶の間や映画館からつながる良質映画を厳選紹介しています。
今回紹介するのは正直観るのに覚悟がいる作品です。
理由は題材が『ユダヤ人迫害』ものだからです。
それを象徴するのが『アウシュヴィッツ強制収容所』という第二次世界大戦中にナチス政権による大量虐殺の際に使用された施設です。
実際に歴史として存在していた歴史上最悪かつ非人道な建物であり、それを扇動したのがナチス党の総統であるアドルフ・ヒトラーです。
彼は昔は絵描きでしたがその時からユダヤ人差別主義者でした。その後、1919年にナチス党の前身組織に入党し、1921年にはナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)の党首へと昇り詰めました。
彼の思想は「現在のドイツを悲惨な状況に陥れたのはユダヤ人だ」という荒唐無稽で差別主義的な内容でした。しかし人の心を動かすような口調で繰り出される演説は多くの人を魅了し、1932年、国政選挙でナチス党が第一政党となるとヒトラーが実質ドイツのトップとなり、ナチス党による独裁政権が開始。そして1939年、ナチスドイツ軍がポーランド領への侵攻を開始し第二次世界大戦が勃発しました。
当時のこの事件は決して風化させてはならないという使命と共に数々の素晴らしい作品が世に出されています。
今回は『観るのが辛いが、それでも絶対に人生に一度は観て欲しいユダヤ人迫害映画』
を5つご紹介します。
1.関心領域 THE ZONE OF INTEREST
製作年 :2023年
製作国 :イギリス・ポーランド・アメリカ
上映時間:105分
監督 :ジョナサン・グレイザー
<あらすじ>
空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。時は 1945 年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘドウィグら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?
ドイツ人一家の裕福な生活と日常をひたすら俯瞰する映画。
ただし序盤に場所がアウシュビッツの塀の外であることがわかると彼らの日常に流れている騒音や金切り音、時々罵声と共に鳴り響く銃声、空を見上げると焼却炉の煙突から立ち上る煙が全て意味を成していく。
全く直接的な表現や演出は無い。
これが全て【間接的】なのが恐怖でしかない。
人間の【見えない部分・知らない領域に恐怖を覚える】特徴を最大限に引き出している作品。
ありとあらゆる”ヒント”を示し続けることで勝手に観客が各々恐怖を増長させていく。
繰り返すが、流れている映像はごく普通の一家の日常。そこにある暗黒の世界史の要素を入れるだけで一気に胸糞映画に。
一家が普通に過ごせば過ごすほど、トラウマ度は増していく。庭のガーデニング、子どもたちのプール開き、夫の転勤による引越しを拒絶し今のアウシュビッツの生活を手放さない妻。トップの父を尊敬している子どもたち。
関心領域というタイトルはつまり【無関心の領域が存在する】ことをうまく強調している。
その対象がユダヤ人であり、彼等の死であり、そしてアイデンティティ全てが無関心の対象となっている。
『愛の反対は憎しみではなく無関心』。
マザーテレサの言葉だが、 例え彼らが差別を直接的にはしていなくても彼らの生活・仕打ちに無関心であれば、それは差別に加担しているのと同罪ともいえる。
音楽も常時流れる不快音が結構メンタルにくる。エンドロールのあの音色はもうすぐにでも席を立ちたかったが最後まで聞き続けてしまったのはある意味、私がこの作品の残酷な世界観に関心を抱いていたからだろう。
恐ろしい映画。観るなら是非映画館で。音響がかなり重要です。
2.サウルの息子 SON OF SAUL
製作年 :2015年
製作国 :ハンガリー
上映時間:107分
監督 :ネメシュ・ラースロー
<あらすじ>
1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。サウルは、ハンガリー系のユダヤ人で、ゾンダーコマンドとして働いている。ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の屍体処理に従事する特殊部隊のことである。ある日、サウルは、ガス室で息子とおぼしき少年を発見する。少年はサウルの目の前ですぐさま殺されてしまうのだが、サウルはなんとかラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出し、ユダヤ教の教義にのっとって手厚く埋葬してやろうと収容所内を奔走する・・・。
『関心領域』がアウシュビッツの壁の外の世界を描いているのと対象に、
本作はまさしく壁の内側を描いた作品。
一言、ものすごいものを観た。
舞台は終戦間際の1944年のアウシュヴィッツ。サウルは、ユダヤ人だが、特別に選抜されたユダヤ人のガス室処刑に従事する「ゾンダーコマンド」と言われる部隊にいる。
彼の眼の前で息子が処刑された。その彼を正式な形で弔うためにラビ(ユダヤ教の聖職者)を探し回るという内容。
「シャワーの後にスープが出るから冷めないうちに早く入れ。服はフックの番号覚えて壁にかけておけ」
と片道切符のガス室に送り込むナチスの行為にも感情を見せずにひたすら無言で佇むサウル。
久しぶりにショックを受けた。これは生半可な気持ちでは観ちゃいけない。
ただ、数少ない「ゾンダーコマンド」だった人の証言を得て日の目を見たこの作品は歴史的にも知らなきゃいけないと思う。
観るべきだが、覚悟すべき。
すごい映画ですが是非『関心領域』を観た人は観て欲しい。
3.ジョジョ・ラビット JOJO RABBIT
製作年 :2019年
製作国 :アメリカ・ドイツ
上映時間:109分
監督 :タイカ・ワイティティ
<あらすじ>
舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。心優しい10歳の少年ジョジョは、空想上の友だちのアドルフ・ヒトラーの助けを借りながら、青少年集団ヒトラーユーゲントで立派な兵士になろうと奮闘していた。 しかし、ジョジョは訓練でウサギを殺すことができず、教官から”ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかわれてしまう。 そんなある日、母親とふたりで暮らしていたジョジョは、家の片隅に隠された小さな部屋で、ユダヤ人の少女がこっそりと匿われていることに気付く。ジョジョの頼りとなるのは、ちょっぴり皮肉屋で口うるさいアドルフだけ…。臆病なジョジョの生活は一体どうなってしまうのか!?
ナチにぞっこんのジョジョ少年が家の中でユダヤ人を見つけてしまい、妄想のヒトラーと葛藤しながら戦後を迎える話。
こんな素敵な戦争映画があったか。リアリティは皆無だがその分をファンタジーとポップ感で十二分にカバー。
オープニングから🇬🇧ビートルズかよと思ったら「I Want To Hold Your Hand」のドイツ語版でぶったまげたし、流れる実際のヒトラーへの熱狂的な映像がビートルズのファンとかぶせたのもズルい。
最後の最高にクールなシーンはデビッドボウイの「Heros」ドイツ語ver.で。
途中割とショッキングなシーンもあるのだけど、ユーモアで切り抜ける演出はさながら「ライフイズビューティフル」。
スカーレットヨハンソンのパパ役最高でした。
賛否両論な戦争映画だけど俺は好き!
4.シンドラーのリスト Schindler's List
製作年 :1993年
製作国 :アメリカ
上映時間:195分
監督 :スティーヴン・スピルバーグ
<あらすじ>
ナチスによるユダヤ人大虐殺のさなか、1,100人以上のユダヤ人の命を救った、謎めいた男オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)に焦点を当て、驚くべき実話に基づいた物語を描く。
第2次世界大戦中のポーランドにやってきたドイツ人実業家オスカー・シンドラーが1000人以上の自社工場のユダヤ人従業員を「軍需工場の生産力として必要」とし、アウシュヴィッツ行きを阻止したという実話をベースにした作品。
第66回アカデミー賞では12部門にノミネートされ、7部門で受賞。
本当に重く、辛いテーマをここまで淡々と描き出し観客を引き込めるのか。
スピルバーグ監督の技量すべてが詰まった覚悟の映画。
命の尊さや人間の力を感じる。
クライマックスはラストの今までの白黒からカラーになる部分。
ここは本当に泣いた。
あのあふれ出る感情を一度体験してほしい。
5.ライフイズビューティフル Life is Beautiful
製作年 :1997年
製作国 :イタリア
上映時間:117分
監督 :ロベルト・ベニーニ
<あらすじ>
カンヌ映画祭審査員グランプリをはじめ、数々の映画賞を受賞したロベルト・ベニーニ監督・脚本・主演のヒューマン・コメディ。ナチス・ドイツの強制収監所で、ユダヤ系イタリア人のグイドは希望を失わず、息子のためにウソをつき続ける。
ホロコーストに遭ったユダヤ系イタリア人家族の運命を描いた作品。
過酷な強制収容を「これはゲームなんだ」と息子にうそをつき
事あるごとに明るく振舞い続ける。
酷い境遇の中で愛する息子のために素敵な嘘をつきとおす美しさ、
重いストーリーを扱いながらも、心が暖かくなる。
父親の子どもを思う偉大さや楽しくユーモアのある子育て方法は必見。
どんなに絶望的な状況でも楽しさと幸せは作れる。
それを教えてくれる素晴らしい作品。
いかがでしょうか。
このジャンルは実際に存在した史実のため、観ながら人間の残虐さについて感じることは多いと思いますが、同時に二度と起こしてはならない覚悟と各監督の想いを色々な視点から学ぶことが出来る貴重な映画ばかりです。
是非人生の大切な時間をつかって本作を観てみてください。
きっと自分にとって価値が芽生えると思いますよ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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投稿を表示どの作品も重い内容…だけど、タイトル通り二度と起こしてはいけないからこそ、見ておくべき作品ですね。
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投稿を表示私も関心領域を観た後、あの向こう側(内側)の作品を観たくなってます。そしていくつか観たらまた、関心領域観ようと思っています!なので、参考にさせて頂きたいと思ってまーす♡
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投稿を表示情報有難うございます。「シンドラーのリスト」は名作で、音楽も印象深いです。
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