これぞ原点のルパン!ハードボイルドな『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』はシリーズの集大成だ
「ルパン三世」と聞いて、あなたはどんな姿を思い浮かべますか?
コミカルで明るい、みんなの人気者のルパン? それとも、原作漫画のような、危険な匂いのする、クールでダーティなルパン?
もし、あなたが後者のファンなら、この**『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』**は間違いなく必見の一作です。本作は、近年のルパンシリーズの中でも特に「原点回帰」の色が濃く、追い詰められ、苦しめられるルパン一味の姿が、最高にスリリングな作品でした。
これは、シリーズの因縁が繋がり、一つの終着点へと向かう物語。いわば「最終章」のような風格を漂わせています。
本作で描かれるのは、まさに「逃走劇」。過去の因縁が絡み合う中、ルパン一味は、ある種の「醜さ」と、しかし強烈なポリシーを持つ敵に徹底的に追い詰められていく。余裕綽々のいつもの姿はそこになく、仲間と共に絶体絶命の危機に瀕する彼らの姿は、観る者に息つく暇も与えない。
まさに”原点回帰”。大人のためのハードボイルドなルパン三世
この映画の最大の見どころは、その徹頭徹尾ハードボイルドな作風です。
仲間と軽口を叩きながら困難を乗り越える、というよりも、それぞれがプロフェッショナルとして、ギリギリの状況で自らの腕と信念だけを頼りに戦う。常に余裕だったはずのルパンたちが、本気で苦しみ、あがく。その姿が、逆に彼らの「本物のカッコよさ」を際立たせていました。この緊張感が、エンディングまで途切れることなく続く様は圧巻です。
敵役の”醜さ”とポリシーに心惹かれる
本作の敵キャラクターは、非常に印象的です。単なる悪役ではなく、彼には彼の揺るぎないポリシー(信念)があります。
そのポリシーは、もちろんルパンのそれとは相容れない。しかし、自分の信念を貫くその姿には、ある種の「醜さ」と同時に、観客の心を惹きつける強烈な魅力がありました。正義と悪では割り切れない、信念と信念のぶつかり合いが、物語に深い奥行きを与えています。
鑑賞前に知っておきたいポイント
この映画を120%楽しむために、一つだけ伝えたいことがあります。
それは、「可能なら、関連作品を観てから鑑賞してほしい」ということです。
私自身、全ての関連作を観ていなかったため、「この因縁は、どの作品から来ているんだろう?」と、つながりが分かりにくい部分がありました。本作は、それまでの物語の積み重ねがあってこそ、その面白さが倍増する「シリーズ集大成」的な作品です。
おそらく、
『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』
『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』
『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』
といった作品群を観ておくと、キャラクターたちの関係性や過去の因縁が腑に落ち、より一層楽しめるはずです。私も、これらの作品を見直して、もう一度本作を鑑賞したいと心から思いました。
こんな人におすすめ!
原作漫画のような、ダーティでクールなルパンが好きな人
軽快なアクションより、重厚なハードボイルド作品が好きな人
ルパンシリーズを深く追いかけているファン
これは、一見さんには少し不親切かもしれません。しかし、だからこそファンにとってはたまらない、深く、濃密なルパン体験が待っています。シリーズの集大成として、ぜひ覚悟して臨んでみてください。