【ネタバレあり】"赤"で主張する浮気行為へのレッドサイン Netflixドラマ「阿修羅のごとく」

昭和を代表する家族劇の傑作「阿修羅のごとく」、時を経ても色褪せない魅力がそのままに令和に甦る!数々の名作ドラマを執筆し、日本のホームドラマの礎を築いた不世出の脚本家、向田邦子。数ある向田作品の中でも、最高傑作として名高いドラマシリーズが、晩年の1979~80年に放送された「阿修羅のごとく」である。そして、世界的名匠、是枝裕和の監督・脚色によるリメイク版全7話がNetflixにて、1/9(木)より配信開始となった。
阿修羅のように、ときに争い、ときに笑う四姉妹の生活がリアルに映し出され、時代背景は変われど、人間の心情は時代によって変化するものではないと感じさせてくれた。本作では、赤いものが多く登場し、"赤"が主張されていた。この"赤"が表す意味を考察するとともに、自己の闇を見つめる物語についてネタバレありで語る。

■あらすじ
ある冬の日。竹沢家の四姉妹が久しぶりに集まった。生け花を教える長女・綱子、専業主婦の次女・巻子、図書館で司書として働く三女・滝子、そしてウエイトレスの四女・咲子。滝子の話では、母・ふじと暮らす老齢の父・恒太郎には愛人と子どもがいるという。信じられないとは思いつつ、母の耳には入れないことを誓い合う4人。しかしこの騒ぎをきっかけに、女性たちの日常に潜む、さまざまな葛藤や秘密が明るみに出る。
言葉にできない不安を"赤"で表現したレッドサイン
今の時代は報告・連絡・相談など痴話喧嘩までスマホや電話で何度もやり取りできる世の中。本作の
※以下ネタバレを含みます。
本作では、浮気行為が主題として描かれ、浮気行為などに気づいたとしても、本人には問い詰められないような人間模様の姿が特徴的であった。その中で、印象に残った言葉として、第4話の中で、四姉妹の次女である巻子の娘の「お母さんもお父さんも、小さいことだとディスカッションするのに、大事なことは話し合いせず、明日に延ばすの」という言葉がある。
また、もう1つの本作の特徴として、作中に「赤いもの」が多く登場する。赤ワインや赤い口紅、赤い毛糸玉、ボクシングのグローブなどが印象的である。本作で強調されていた「赤いもの」が示す意味は、自身で相手に問い詰めることのできない不安な気持ちを、赤いもので警告表示(レッドサイン)として伝えたかったのではないかと考察する。
実際に作中で、四姉妹や母などのそれぞれが抱える問題に対し、言葉に出来ない気持ちの主張として「赤いもの」が使用されている場面が多くあったため、紹介していく。

三田村綱子 (宮沢りえ)
竹沢家の長女。生け花の師匠をして生計を立てており、夫の死後、息子をひとりで育て上げた。料亭「桝川」の主人・貞治とうしろめたい関係を続けている。
「赤ワイン」
本作で赤ワインは何度か出てくるが、第5話で、綱子が障子に赤ワインをぶちまけるシーンは印象的である。綱子自身、悪いと分かっていても不貞行為が辞められず、自身の行為に対し、誰かに相談して止めて欲しかったのではないか。しかし、実際に自ら相談はできず、不意に気づかれてしまった次女巻子にお見合い相手を見つけてもらうも、途中で逃げ出してしまう。そんな誰にも相談できない自身の行為の気持ちが、赤ワインで表現されていた。

里見巻子 (尾野真千子)
竹沢家の次女。会社員の夫・鷹男と、長男・宏男、長女・洋子の4人で暮らす専業主婦。一見幸せそうに見えるが、鷹男が浮気していることに気づき……。
「赤い毛糸」
巻子の言葉に出来ない気持ちへのレッドサインとしては、赤い毛糸が印象的であった。家で編み物をしている時は、決まって赤い毛糸を使っていた。これは夫本人への警告表示でもあるとともに、家族への気持ちの表れだったのではないか。実際、娘には言葉にせずとも、母の気持ちが伝わるが、大人の事情として、自身の気持ちを伝えることはできなかった。しかし、巻子は、夫にはぐらかされてしまうものの、四姉妹で唯一、自身の疑念を直接投げかけている。

竹沢滝子 (蒼井優)
竹沢家の三女。父の不倫を疑い、興信所の勝又に調査を依頼した、都立図書館の司書。
「赤い口紅」
滝子のレッドサインとしては、塗りすぎくらいな赤い口紅が印象的である。この口紅の赤が示す意味としては、直接向けられない勝又への好意の気持ちではないか。滝子のレッドサインは、四姉妹の中で唯一、不安などのマイナスな気持ちではなく、好意というプラスな気持ちが隠されており、恋愛経験が乏しく、直接好意を伝えることが苦手な滝子の性格が表現されていた。

竹沢咲子 (広瀬すず)
竹沢家の四女。喫茶店でウエイトレスとして働く。幼い頃から味噌っかす扱いされてきたが、同棲するボクサー・陣内がチャンピオンとなることに自身の望みも託す。
「赤いジャケット」
陣内がチャンピオンになると、咲子の羽ぶりが良くなり、赤いジャケットや、赤い服を多く着用しているシーンが印象的である。この赤いジャケットが示している意味は、将来の不安だったのではないか。作中でも姉たちから、ボクサーの先は長くないことなど言われており、陣内の身体の心配など、直接本人には伝えることのできない気持ちが赤いジャケットに表現されていた。

竹沢ふじ (松坂慶子)
四姉妹の母。共白髪を信じる貞淑な妻として、波風を立てずに過ごしてきた。夫の浮気には気づいているものの、言葉にはしない。
「パトカーのおもちゃ」
四姉妹の母ふじが、第1話で、「でんでんむし〜」の歌を歌いながら、パトカーのミニカーを壁に投げつけるシーンは、本作で最も印象的なシーンであった。なぜパトカーのミニカーだったのか、このパトカーが示す意味として、夫の浮気に気づいているものも、言葉にできない感情を、パトカーの赤いサイレンとしてレッドサインを表現していたのではないか。
人形浄瑠璃文楽が表す「阿修羅」
本作では、伝統芸能が多く登場し、第1話で登場した人形浄瑠璃文楽が印象的である。人形浄瑠璃文楽とは、日本の伝統芸能で、江戸時代に発展した三味線音楽に合わせ人形使いが操る人形劇である。この人形浄瑠璃文楽は本作を象徴していたように感じた。
・「操る/操られる」
人形浄瑠璃文楽は、人形が人間の手によって動かされる芸能である。人形遣いがいなければ、人形は自ら動くことができないこの構造が、作中の登場人物たちの関係性や心理状態を象徴していたように感じた。例として、登場人物たちは、それぞれの環境や周囲の人間に影響され、「操られる」ように行動している場面が多く見られる。また、感情的な駆け引きや、相手を支配しようとする行動が、人形浄瑠璃文楽の「操る」という構造と重なっているようにも感じた。
他にも本作では、能などの伝統芸能が出てきたりと、時代背景演出へのこだわりを感じる部分が多くあり、このような点に注目することでリバイバル版をより楽しめるのではないか。

【キャスト】
宮沢りえ、尾野真千子、蒼井 優、広瀬すず
本木雅弘、松田龍平、藤原季節、内野聖陽
國村 隼、松坂慶子
【スタッフ】
原作・脚本:向田邦子
監督・脚色・編集:是枝裕和
企画・プロデュース:八木康夫
プロデューサー:福間美由紀、北原栄治、田口聖
音楽:fox capture plan
制作プロダクション:分福
製作:Netflix
Netflix話数:全7話(一挙配信)
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/jp/title/81759233
Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』1月9日(木) Netflixにて独占配信開始
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投稿を表示「阿修羅のごとく」見たいような見たくないようなといった感じで少し複雑な心境を持ちました😅 男だからですかね?不思議?に感じましたが、是非、機会を作って見たいと思います😉