DISCASレビュー

カッツ
2025/11/16 07:05

死刑台のエレベータ

1958年制作のフランス映画『死刑台のエレベーター』は、ルイ・マル監督の記念すべき長編デビュー作であり、モーリス・ロネとジャンヌ・モローが主演を務めた、スタイリッシュで緊張感あふれるサスペンス映画である。

この作品といえば、何よりもマイルス・デイヴィスによる即興演奏のテーマ音楽が印象的だ。ジャズの名手が、映画の映像を見ながら即興で演奏したという事実は驚きであり、その音楽が作品全体に漂う孤独と緊迫感を見事に表現している。今でもあの旋律を聴くと、すぐにこの映画の空気が蘇ってくる。

物語は、自殺に見せかけた完全犯罪を企てた男が、犯行後にエレベーターに閉じ込められてしまうという予期せぬ展開から始まる。その間に、別の若者たちが彼の車を盗み、さらなる事件が起こることで、事態は思わぬ方向へと転がっていく。サスペンスの構造は巧妙で、静かな映像と音楽が緊張感を高めながら、登場人物たちの運命を冷徹に描いていく

『死刑台のエレベーター』は、フランス映画の美学とジャズの即興性が融合した、時代を超えて語り継がれる名作であり、ルイ・マルの才能が鮮烈に刻まれた一本だった。

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